滋賀県草津市上寺町にある、畑に囲まれた閑静な場所に位置する西蓮寺。約560年前の創建以来、地域の人びとに親しまれながら活動を続けるこの寺院を訪れたのは、まだ夏の暑さが残る2019年10月5日、「樹心日曜学校百周年記念報恩講」を取材するためでした。

⑦法要終了後の集合写真

 

■ちょうど百周年

樹心日曜学校がスタートしたのは1919(大正8)年。現住職(第18代目)の上寺和親さんによれば、2015年の本堂修復工事中に古い出席帳が見つかり判明したとのこと。「今年がちょうど百周年になるので、それを記念して日曜学校の子どもたちのご家族、また門徒の皆さんで「家族報恩講」としてお勤めできればと思いました」と、今回の記念法要に込めた願いを語っていただきました。

 

    ①みんなで正信偈・同朋奉讃

    みんなで正信偈・同朋奉讃

 

10月5日、本堂には中学生を含め子どもたち16人、保護者や関係者などを含めると80人以上が集まり熱気で満ちていました。午後7時過ぎ、第1部「百周年記念開会式典」が始まりました。司会進行は副住職の孝之さん。別の児童3人が「ちかいの言葉」で法要の趣旨を述べた後、正信偈・同朋奉讃が勤められ、その力強い声に圧倒されました。

 

■おじいちゃん、お父さん、自分も

「児童代表のお祝いの言葉」を述べたのは小学6年生の山本瑛太くん。幼稚園の頃から日曜学校に通い始め、みんなで正信偈のお勤めをしたり、仏さまのお話を聞いたり、ゲームをしたり、楽しい時間を過ごしていること。おじいちゃん、お父さんも日曜学校の出身で、中学校へ行っても通い続けたいこと。彼の言葉から西蓮寺は地域に深く根差しており、子どもたちにとっての大切な場となっていることを実感しました。

 

③児童代表のお祝の言葉を述べる山本瑛太君

児童代表のお祝いの言葉を述べる山本瑛太くん

 

「とにかく緊張したけれども練習したかいがありました。日曜学校はみんなと一緒に遊べるし仲良くなれるのが好きです」と、山本君は話してくれました。若坊守の恵美さんは「内容は一緒に考えたのですが、実際は彼自身のことばになっていてびっくりしました。すごいですね」と嬉しそうに話されました。

 

■願いのバトンタッチ

本山からの祝辞が読まれた後、70代男性、40代男性、小学6年生の女子がそれぞれ前に出て、その祝辞を入れた文箱を上の世代から下の世代へ手渡す「願いのバトンタッチ」が行われ、恩徳讃斉唱で第1部が閉会となりました。

 

②願いのバトンタッチ

願いのバトンタッチ

④昭和初期の音色を奏でる年代物のオルガン

昭和初期の音色を奏でる年代物のオルガン

 

第2部は「キャンドル・お話の集いと親子との合唱」。坊守の春美さんによる四弘誓願のオルガン演奏がなされる中、子どもたちや保護者、参拝者が本尊前に並べられたろうそくに灯火し、「なまんだぶつの子守歌」を全員で合唱しました。

 

長崎県佐世保市から来られた近藤章氏(すみれ保育園理事長・西心寺住職)による童話『ともがき』の朗読は、圧巻でした。『ともがき』は明治・大正・昭和の時代に活躍した口演童話家・久留島武彦氏の作品で、カラスやネズミやシカなどの動物たちが、性格や姿などは違うけれども力を合わせて困難に立ち向かう話で、テーマは「友情」。近藤氏は、朗読というよりも身振り手振りを交えたひとり芝居という趣で熱演し、子どもたちが笑ったり驚いたり声を上げたり、近藤氏の表情豊かな語り口に夢中になっていたのが印象的でした。

 

⑤童話『ともがき』を熱演中の近藤章氏

童話『ともがき』を熱演中の近藤章氏

⑥閉会のあいさつをする上寺和親住職

閉会のあいさつをする上寺和親住職

 

第3部は「百周年記念閉会式典」。あいさつの中で、上寺住職は「この法要を機に日曜学校の歴史を振り返ることができました。百周年を節目として、引き続き聴聞を続けていきたい」と決意を新たにされました。育成会会長の山本彩子さんは「願いのバトンを受け取り、次の世代に引き渡すことを、日々の生活の中で果たしていきたい」と思いを述べ、最後に百周年記念品が授与され、恩徳讃斉唱で閉会となりました。

 

■お寺との関わりをふりかえって

終了後、責任役員の今村正勝さんに話を伺いました。「小学1年生から通い始めました。中学生になって寺とは離れましたが、50代半ばの時に、1998年の蓮如上人五百回忌があり、それを機縁としてまた寺との関わりが始まりました。法要中は子どもの頃のことを思い出しました。寺でやった地蔵盆や、寺に皆で泊ったことなど楽しい思い出がよみがえってきましたよ」。75歳の今村さんの口調は元気で、これからも寺院を支えていきたいと語られました。

 

≪取材を終えて≫

樹心日曜学校が150周年を迎える時には、この場にいる小学生が還暦前後になっているでしょう。その時におとなになった子どもたちが、またこの本堂に集まるのではないか。そのようなことが想像できるような、素晴らしい樹心日曜学校百周年記念報恩講でした。

(京都教区通信員・本多 真)