真宗大谷派(東本願寺)では、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃事業の5つの重点教化施策の一つとして、「真宗の仏事の回復」を進めています。これは朝夕のお勤めや報恩講をはじめ、通夜・葬儀・法事などのあらゆる仏事が、御本尊を中心とした仏法聴聞の場として回復していくための取り組みです。ここでは各教区の動きを紹介します。
■これまで
岐阜高山教区高山地区では、同朋唱和推進の事業を行っています。これは、2019年5月に厳修された旧高山教区・高山別院、宗祖親鸞聖人七五十回御遠忌の『正信偈』同朋唱和の取り組みが継続されているものです。
御遠忌法要での目的は、法要だけで終わるのではなく、お手次寺の報恩講参詣や門徒宅のお内仏報恩講の勤修につなげていきたいというものでした。
2019年5月11日の当日、「にっちゅう同朋唱和」では、「正信偈草四句目下、念仏讃淘三 三朝浄土の大師等 次第三首」のお勤めに、組門徒会員と希望する前組門徒会員の皆さん約400名の参加をいただきました。
〔『正信偈同朋唱和集―現代語訳付』(旧高山教区・別院御遠忌委員会発行)を使用〕
また、同日の「おたいや同朋唱和」では、「正信偈真四句目下、念仏讃淘五 五十六億七千万 次第六首」のお勤めに、各寺から2~5名の合計289名の方の参加をいただきました。 この準備段階で、各組ごとに約3年間にわたり12回の練習会を実施し、さらにその内、3回は別院で合同練習を行い、別院報恩講同朋唱和への参加を経て臨んでいただきました。
〔『同朋唱和勤行集』(緑本 東本願寺出版発行)を使用〕
御遠忌における同朋唱和のお勤めは、参加された方をはじめ多くの方から「満堂での声明は大伽藍を揺るがす大音量でとてもすばらしかった」「今後、別院報恩講への呼びかけをはじめ、各寺院・各組において、報恩講に向けての同朋唱和の取り組みを進展させていくべきである」など称賛の声をいただきました。
検討の当初は、どのような内容にするのか、どの座で行うのかなど大いに議論となりました。特に、結願日中の提案として、「やはり最後は伝統的な十淘で勤めるべきだ」との声も上がり、企画段階で法要教化部会を二分する議論となりました。 このことから、「法要儀式に関する学習会」を開催し、伝統法要及び同朋唱和の意義について学習を行いました。平素、儀式の意味を問うことが疎かになっている中、真宗儀式をあらためて考えるうえで意義ある機会となりました。
■高山地区の近況
2020年7月の教区改編による岐阜高山教区の発足と共に、高山地区に「飛騨御坊真宗教化センター」が設置され、育成部会の担当で「同朋唱和推進の願いを考える会」を開催しています。これは任期3年間で各組を巡回していく予定です。
2020年9月30日、高山1組で「同朋唱和推進の願いを考える会」が開催されました。
当日は、組内住職13名が参加し、育成部会幹事の三木朋哉氏が『私は「ともの同朋」として参加していたか』と題して問題提起し、懇談がもたれました。
御遠忌法要に向けて取り組んできた同朋唱和の推進は、御遠忌のためにとどまらず、別院・各寺院の報恩講の回復のためであること。また、門徒だけでなく、住職が主体的かつ継続的に関わるべき教化事業であることを再確認することを掲げました。
また、御遠忌の事前学習会の中で、「儀式の怖さ」について取り上げられ、「人間はなぜ儀式をするのか。人間存在の深いところに直接届き、生命のエネルギーというところに直接触れて暴力的にもなったりする。宗教は怖いと言われるのは、儀式などを通してみんなが一つになるため、壁を作り他を排除するということを知る必要がある。みんなでそろってお勤めができたという快感そのものに、危うさもあるのだということ」(竹橋太氏「伝統儀式と同朋唱和」・『報恩講―伝承から新たな伝統へ―』趣意)との指摘にも触れました。
なお、同年10月5日の益田組の「同朋唱和推進の願いを考える会」では、20代のご門徒も参加いただき、卒直な意見を聞くことができました。
残された課題として、御遠忌の取り組み時点では、同朋唱和の意義についてはあまり確かめられなかったことが挙げられます。
今後は、住職・寺族がご門徒ともども積極的に取り組み、「とも同朋」の関係を再確認していきたいものです。
■これから
新型コロナウイルス蔓延の影響により練習会が開けない中、同朋唱和のそもそもの意義を考えることは、将来練習を再開する上で重要であると考えています。
(岐阜高山教務所)