新潟市中央区 願浄寺の境内にある『蒲原食堂(かんばらしょくどう)』は、2020年の7月にオープンしました。願浄寺坊守の北山真澄さんと、北山さんの昔からのお知り合いである山田尚子さんが中心となり、3人のスタッフで食堂を始められました。この場所は2020年3月まで、65年の歴史がある幼稚園でした。

 

↑ 手書きのメニューボード。ぬくもりを感じます。

 

 

 

「“食“をとおしていのちと向き合い、ともに考える場でありたい」という願いが込められた食堂。毎週月曜日のランチのみの営業で、一食600円で提供しています。幼稚園の時の給食とお寺のお斎をもとに考えられたメニューは、素材の味を活かし、旬の食べ物を取り入れています。食堂の畑で採れた野菜を使うこともあります。

 

↑ 取材日のメニュー。発酵食品も取り入れた体に優しい献立です。

 

 

 

お客さんは願浄寺の門徒さんだけでなく、口コミで知って来られたり、ポスターなどを見て来られる方もいるそうです。現在は感染症対策の為、食事数や席数を制限して営業されています。

 

↑ 手書きの地図がかわいらしい蒲原食堂のチラシ。クリックしたら裏面も見れます。

 

 

 

イベントなどがある日もあり、取材をした日は三条教区仏教青年会の方が来て、お坊さんとお話しができるイベント『お坊さんは食堂にいる』を開催していました。お食事が終わってから、お客さんとお坊さんがおしゃべりをする姿がありました。

 

北山さんは、取材が始まり開口一番に「食堂は、がんばっていないんですよ。楽しいから1年続けられたんだと思います」と笑顔でおっしゃっていました。

 

その真意や運営内容について、北山さんにお話を伺いました。

 


 

ーー「蒲原食堂」を始めたきっかけを教えてください。

 

幼稚園が閉園して、場所・厨房・食器などがそのままになっていて、ここは人が集まってこその施設だな、何かできればいいなと思っていました。

幼稚園ではずっと“食べること“を大事にしていました。“食べること“がいのちを考えることだなと思っていて、そういうことをずっと伝え続けられる場所であればいいなと思い、「じゃあ食堂にしよう!」と決めました。

 

 

 

ーー蒲原食堂のパンフレットに載っていた「お客様とともに育ちあう食堂」について、どんな願いがあるのでしょうか。

 

この厨房(蒲原食堂は、厨房と食堂が大きな窓で仕切られていて、開けたり閉めたりができるようになっている)を作った幼稚園の始まりも「作る人と食べる人がいつも同じ目線で、一つのことを一緒に考えられたらいいよね」と思って作られたものでした。なので、作り手と食べる人が分断しないようにという願いがあります。

 

↑ 食堂の様子。厨房が見える大きな窓が特徴です。 

 

 

また、食材に関わっている方々(農家さん、お肉屋さんお魚屋さん、食材を運ぶ人など)裏にいる方たちみんなひっくるめての“食べるもの“だと思っているので、作り手はいつも自分のことだけじゃなく、食べる人を思いながら作るということを考えています。

 

そして、作って終わりではなく、食べる時に「こんな思いで作ったんですよ」と伝えたり、お客さんから「なんで?」と聞かれたら「なんでだろうね」と一緒に考えられるような関係を築ける、そんな場でありたいです。

 

実際、お客さんから「こんなやり方(作り方)あるよ」とか「こんなの食べてみたい」「これおもしろいから作り方教えて」「私はこういう風に食べた」など、いろいろな話をしています。作り手と食べる人が行ったり来たりしている、そんな関係です。

 

他にも、土づくりをして畑で野菜を育てているのですが、野菜ができるまでの苦労や過程が面白くて、畑のこともお客さんと共有して話しています。

 

 

↑ 野菜くずを使用した無農薬の畑。ぐんぐん育つそうです。

 

 

 

 

ーーイベントがある日もありますが、それについて教えてください。

幼稚園をやっていた時に、よく絵本の読み聞かせに来てくれていた“ふくちゃん“が『絵本らいぶ』というイベントを月に一回やってくださっています。

 

ふくちゃんが「蒲原食堂でやっていいですか?」と言うので、お客さん大人ですよ?と言ったら「いいんです」と言って来てくださることになりました。大人は大人目線で見られるんですよ。ふくちゃんが読んで、お客さんたちがそれについていろんなことを言い始めるんです。そしてふくちゃんがそれについて応える。一冊で2、30分かかることもあります(笑)

 

 

↑ 『絵本らいぶ』の様子。幼稚園時代のご縁を感じます。

 

 

他にも、たまたま食べに来られたお客さんから「ギター弾いてもいい?紙芝居も読むんだけど』と提案され、時々ライブをしていただいています。

 

そうやって、お客さんであったり、ここに関わりのあった人たちがちょっとづつ盛り上げて、そこから広がったりしています。

 

今日の『お坊さんは食堂にいる』も、お客さんと悩みなどを話していた時にこの活動を知り、呼ぼうとなりました。

 

 

 

ーー食堂を通してご自身の中で気づいたことなどがあったらお聞かせください。そして、これからのビジョンなどを教えてください。

 

お客さんからいろんなことをお話してもらえるのが、こんなに楽しくて心地良いことだとは思わなかったです。

 

食に興味がある人とか、体に優しい食事が食べたいという人が来るんですけど、自然とそういう人が集まってきて食の話をします。門徒さんだけじゃなく、いろいろな人と繋がれているのがすごいと思うんです。お客さんを通して、こういう“場“があってよかったなと気がつきました。

 

お寺って、やろうと思えばなんでもできると思うんです。場所があるし、厨房もあるし、門徒さんもいるし。そこで何がネックになるかを考えてみると、個人でやるのかお寺としてやるのか、お金をどう処理したらいいか、門徒さん以外の人が入ってくることについてなど、いろいろあると思うんですけど、そういうことをよく考えていったら、やれないことじゃないと思いました。

 

細々と営業してきたけど、これからもこのまま続けたいなって思います。
私たち3人が楽しいんですよ、本当に。あまり無理をしないで、でも研究心があるから、スタッフで「こうした方がいいんじゃない?」とか話して楽しみながらやっています。失敗もあって発見もある。それが楽しいです。

 

 

↑ 山田さん(左)と北山さん(右) 笑顔がステキです。

 


【取材を終えて】

 

今回蒲原食堂を取材して、食堂を通じて自然な形で教えが開かれているように感じました。それはきっと「お寺(仏教)は始めから開かれた場所(教え)」だからだと思います。北山さんの「がんばっていないんです」という言葉には、無理のないやり方で、お寺は開かれた場所だということを伝えてくれているように感じました。

 

最後に、スタッフの山田さんは「それぞれのお店にきっとあると思うけど、このスタッフのメンバーだからこその雰囲気があって、こういうのが心地いいと思った人が来てくれてるんじゃないかと思います。この建物(幼稚園だった場所)の雰囲気もある気がするけど、なごむ雰囲気がありますよね」とおっしゃっていました。美味しいご飯を求めて来たお客さんと、食への思いを共有することができる蒲原食堂。

 

「こうやって人と話していると、いろんなアイディアが浮かんでくるんです。これ大事ですよね」北山さんと山田さんは、取材中にも食堂についてのワクワクするような新たなアイディアが浮かんでいたのでした。

 

【蒲原食堂】
〒950-0085
新潟市中央区長嶺町10-11 願浄寺内
駐車場あり
Tel 025-241-1656(予約可)
Fax 025-243-2307
Mail kanyou5@gmail.com
営業時間
毎週月曜日 11:30~13:00
※20食限定
※祝日月曜も営業

 

(三条教区通信員 関彩子)