寺院活性化支援員を派遣して、お寺の現状や課題、要望をていねいにお聞きし、寺族と門徒と一緒に教化の取り組みを考える〝寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院教化支援”
2021年8月23日(火)、安楽寺の役員をされてきた梶誠さん、黒柳明男さんに聞き取りを行った寺院活性化支援室・過疎・過密地域寺院教化支援では、その後、電話やメールのやり取りを行いながらお寺の今後のことを話し合いました。そして、2022年3月13日(日)、安樂寺報恩講(解散法要)が勤まりました。
【名称と開催時期の決定】
たくさんのやり取りをする中で、「最後の法要を解散法要というだけでなく報恩講として勤めたい! 冬じゃなく少し温かくなって人が集まってくれやすい頃」という地域の方々の希望がありました。
結果、2022年3月13日(日)「安樂寺報恩講(解散法要)」として勤まることになりました。
【法要の内容/法要次第】
報恩講として勤めるので、報恩講のお勤めをみんなで声を出して読みたい。
また、解散法要後は、長年この御堂に在っていただいた「本尊・阿弥陀如来像」、「親鸞聖人御影」、「達如上人御影」を本山にお返しすることになるので、『阿弥陀経』を是非ともあげてほしい。
「法話は必ずしてほしい。今(新型コロナ感染症)のご時世の中で、ほとけさんの教えをみんな聞きたいと思っているはず。あんまり難しいことを話されても分からんけど。あと、あつまる方々は、浄土真宗の方もおれば、浄土宗の方もおるし、曹洞宗の方もおると思う。」
「何人お参りに来られるか正直わからん。高齢者ばかりだから、あんまり長すぎてもいかん」
ということで、以下のとおり日程や法要次第を決めました。
【安樂寺報恩講(解散法要)】
≪岡崎教区第28組安樂寺報恩講(解散法要)≫
【法要日程及び次第】(法要時間40分/法話時間60分】
13:30 開式の辞
真宗宗歌斉唱
あいさつ(責任役員・総代・野林地区住民代表)
法要 次第説明
先 出 仕
次 総 礼
次 伽 陀 先請弥陀
次 表 白
次 御 経 佛説阿弥陀経 短念仏留 ※みなさまにお焼香いただきます
次 正信偈 草四句目下
念仏讃 淘三
和 讃 三朝浄土の大師等 次第三首
次 回 向 願以此功徳
次 総 礼
引き続き
御 文 聖人一流
法話 橋本 真 師(企画調整局参事)
九州教区山門東組西勝寺・福岡県柳川市出身
あいさつ
恩徳讃
集合写真
15:30頃 閉会
※こちらからwordでダウンロードできます。
【記憶と記録に残るものを】
「江戸時代のころからあるお寺。解散法要が終わって取り壊したら、みんないつか忘れていってしまうし、新しく野林町に住んだり生まれたりする人はお寺があったことさえ分からなくなると思う。何か記憶や記録に残るものがあったらいい。」
その声を聞き、「昔の安樂寺の写った写真を集めて、記憶をたどる」という企画(ヒストリーピン)はできないか?と思い、写真を持ってないか地域の方々に聞いていただきましたが、残念ながら昔の写真は1枚もありませんでした。
そこで検討結果、寺院活性化支援室で取り組んだ「寺報をつくろう」のノウハウを用いて、聞き取りの内容や郷土資料館「足助資料館」での情報を集めて『安樂寺新聞』を作成することにしました。
加えて、法要の趣旨を述べる表白文・「安樂寺報恩講(解散法要)表白文」を作成することにしました。
『安樂寺新聞』
『安樂寺報恩講(解散法要) 表白文』
【3月13日法要当日】
一部雨予報も出ていましたが暖かな陽気でありました。
宗祖600回御遠忌と記された幕を張り、お荘厳をできる限りで整えられました。
「正座でお参りはえらい(大変・しんどい)でねえ。」と重いパイプ椅子まで丘の下にある集会所から上の本堂に上げ、「去年電気のヒューズが飛んでしまって。暗がりは転ぶといかんし、寒かった場合はストーブもいるで。」と発電機を用意されていました。
※ほんとに頭が下がります。
門徒0人のお寺でありますが野林地区の方々34名(子どもも含む)が最後の法要に集まってくださいました。
インタビューにもお答えいただいた責任役員の黒柳さんが司会・挨拶されました。
10年以上前から安樂寺の今後について考えてきたこと。所属門徒が0人となってからも、お寺は大事だという思いで野林地区の16軒でお寺のお給仕・荘厳をしてきたこと。「こんな状態で次の代に引き継いでいけない」という思いを抱えながらこれまでやってきたことを語られた後、2020年夏から寺院解散の手続きを進めている中にあり、岡崎教区の宝物調査で岡崎教務所の職員や教区内の僧侶、同朋大学仏教文化研究所客員所員 青木馨さん、建築の専門家として東海工業専門学校講師 岩田敏也さんがが来られたことをお話しされました。
法要後に御本尊はご移此されますので、ご移此法要の意味合いも込め、『阿弥陀経』を読誦している間にお焼香いただき、同じ勤行本を持って、報恩講のお勤めをしました。
その後、寺院活性化支援室・過疎・過密地域寺院教化支援の「お寺に寄り添う講師派遣」として、橋本 真企画調整局参事 が途中休憩をはさみながら、法話を行いました。
法要を終え、みなさま名残惜しい気持ちを抱えつつも、長年地域のお寺として大事にしてこられた歴史と思いを各々にあらためて確かめる場となりました。
お通夜ができたということで、急いで帰らなければならない方もあり、お参りの方全員集合とはなりませんでしたが、最後に本堂の前で集合写真を撮影しました。「終わりでただただ悲しい」ではなく、大切なコトをあらためて聞き伝えていく第一歩として。
【今後について】
このたびの安樂寺報恩講を終えました。
宗門法規・宗教法人法による解散手続きについては、安樂寺の所轄教務所である岡崎教務所とやり取りを行い、現在は清算手続きをしております。※手続きについては、所轄教務所にご相談をお願いします。
ご門徒はどうなるか?
⇒安樂寺は門徒0でありました。解散寺院に所属門徒がいらっしゃる場合は、今後も仏教・浄土真宗の教えを聞き続けていただけるよう、他の寺院への丁寧な受け渡しが必要です。
御本尊や脇掛はどうなるのか?
⇒責任役員さんや総代さんとともに本山へお返しする予定にしています。解散手続きの時に、本山への返礼を基本としていますが、場合によりその他寺院へ移安することもあります。
建物はどうなるか?
⇒地域の方々で取り壊す予定になっています。岡崎教区の寺院調査の際に資料的価値のあるものは、同朋大学に寄贈いただきたいとのお話もいただいていますので、再度打合せの上、寄贈することになります。
【寺院活性化支援員聞き書き】
「小さいときからここに住んでいます。安樂寺は自由に出入りができたので、よく中に入って宿題をしたり、畳に寝転がったり、友人と遊んだりしていた。なつかしいな・・・」
〈いろいろお話しての感想〉
自坊でも本堂は自由に出入り可能だが、子どもたちは入ってくることはほとんどない。(本堂内で遊ばれるのはすこし危ないかもしれないなと思ってしまう。)
時代や地域でお寺に対しての距離感も全然違うんだなと感じた。「身近な存在」として感じてもらえるようなお寺を周囲の環境とともに目指していきたいと会話を通して強く感じた。
岐阜県揖斐川町のお寺にある「お寺は村のお内仏」と言っていた意味がわかったような気がした。
またお会いしましょうと言われたのがうれしかった。