「お寺と社会の繋がりを本当に大切にしなければならない」と、真行寺の、藤井秀昭住職は切り出しました。真行寺は、香川県高松市の繁華街に近い高松市扇町に位置します。住職の藤井秀昭さんは、長らくの間、高松市仏教会の会長を勤められていて、人と人との繋がりを大切にされており、真行寺では、地域の方がお寺へお参りすることへの抵抗感を無くすべく、さまざまな活動に取り組まれています。今回はその取り組みの中で「おてらおやつクラブ」と「真行寺寄席」について取材させていただきました。

おてらおやつクラブ

「おてらおやつクラブ」は、元々、2014年に奈良の寺院から始まり、3年後の、2017年にNPO法人化された全国組織の支援活動。昨今、子どもの7人に1人が貧困状態にあると言われているが、そのような中、寺院に集まる果物やお菓子などの御供えを持ち寄って、そういった子どもたちの役に立てたいとはじまった活動です。

藤井秀昭住職は、この活動を高松市仏教会でも是非出来ないかと提案したところ、高松市仏教会の多くの方々が賛同したといいます。毎月、高松市仏教会の有志の方々が御供えの果物やお菓子を、真行寺に持ち寄り、支援をお願いされている団体の方々へ、皆で区分け作業をし、お送りして行く中で、NPO法人の方や子ども食堂をされている方など、色々な方々と繋がり、人の輪が増えたことに喜びを感じると話されました。

仕分け作業①
仕分け作業②

また、時代の流れと共に、今まで当たり前だった、寺院や僧侶の存在感が薄くなりつつある中、この「おてらおやつクラブ」の活動をとおして仏教会の活動や関係が活性化されたいいます。そして、一般社会と寺院が接点を持つ縁が出来たということに、大変意義を感じると藤井秀昭住職は話されました。

支援団体の子ども達から寄せられた、温かいお礼の絵手紙①

支援団体の子ども達から寄せられた、温かいお礼の絵手紙②

◆真行寺寄席

境内にて、「 真行寺寄席 」の看板を持つ、藤井住職

真行寺では、寺院と社会の繋がりを大切にする、寺院の事業として「真行寺寄席」を開催しています。これは御門徒の方々のみが対象の行事ではなく、寺院の近隣の方々、または落語、寄席の好きな方々、老若男女問わず色々な方にお寺に来て頂きたいという、藤井住職の願いが込められた行事であるといいます。

また、落語会においても、段々と新人の落語家の方がお客の前で披露する場が無くなりつつあるのが現状。真行寺寄席に来られる、笑福亭枝鶴さん(枝鶴さん写真)が、若手の落語家の方を養成、場馴れしてもらう機会としても、真行寺寄席という場を大変大切にされているそうです。

「 真行寺寄席 」の案内チラシ、チケット

また、真行寺寄席では、寄席専門のスタッフが20人程いらっしゃるそうで、当日、駐車係や提灯を吊る係の方などがおられます。一つの行事をするにも、住職や坊守だけでなく、御門徒の方々など、色々な方々に手伝って頂いて、はじめて成り立つそうで、そこでも、寺院と、人と人との繋がりの大切さを実感するそうです。

取材をとおして

藤井住職のお話や願いを聞く中で、これからの時代の寺院のあり方、スタイルというものを深く考えさせられました。今までのような形を大事にしていくことは勿論大切であるが、変えるところは変えていき、時代のニーズに合った新たな活動も、寺院には求められている時代に突入していることを感じます。また、真行寺は今から22年前に、本堂に大スクリーンを導入していました。5つのスピーカー等、音響設備も充実させ、寺院で映画館のような臨場感を作り上げ、寺院の行事の度に、法話の後に、藤井住職が厳選した、その時代に合った映画を流しているとのこと。

本堂に設置されたスクリーン

勿論、法話を聞くということも大切ですが、今では、映画を楽しみにお寺へお参りされる方も増えているといいます。お寺へ来る楽しみや親しみを持ち、寺院という場を大切にしていただけることは本当に有難いことだと、藤井住職はつくづく感じると話されたことが印象的でした。

時代は常に同じではなく、移り変わっていく。その時代によって求められるものも変化していく。

現代の私たちにとって、お寺とはどういった存在なのか、また、お寺というものの在り方、いつの時代にも、人の心の拠り所としてあり続けるためにはどうしたら良いのかと、考えさせられる取材となりました。

       (四国教区通信員    河野 一道)