真宗教化センター寺院活性化支援室では、宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃事業として「別院活性化プロジェクト」に取り組んでいます。井波別院瑞泉寺の歴史とともにある”木彫刻のまち・井波”(富山県南砺市)において、2020年度・2021年度とプロジェクトによる取り組みが進められました。
今回は、プロジェクトをきっかけに立ち上がった任意団体「テラまちコネクト」の2022年7月太子伝会での活躍の様子をレポートします。

「太子伝会」の期間中、太子堂では聖徳太子のご一生を描いた絵伝をもとにした絵解きが行われます。

「お寺とまちをつなぎたい」。
そんな思いをもった地域の方々と僧侶が、それぞれの役割を主体的に担いながら、井波別院瑞泉寺と井波のまちを考え活動する「テラまちコネクト」という任意団体があります。この任意団体は、慶讃事業で取り組む「井波別院瑞泉寺活性化プロジェクト」がきっかけとなって生まれ、その後プロジェクトのパートナーとして歩みを進めていただいています。

瑞泉寺山門前にオープンした「テラまち雑貨店」

その活動拠点「テラまち雑貨店」は、まさに井波のまちと瑞泉寺をコネクト(つなぐ)する場所・瑞泉寺の大門(山門)前に2022年4月オープンしました。
 

「テラまち雑貨店」が迎える最初の「太子伝会」。「テラまちコネクト」では、国の「民間公益活動を推進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」に基づく基金の助成を受け、地域で暮らす子育て中の女性の参画にも取り組んでおり、太子伝会に向けての準備もその取り組みの中で参画いただいたスタッフが協力し合いながら行いました。

富山県の郷土料理「あんばやし」(味噌田楽)を準備する「テラまち雑貨店」のスタッフ

瑞泉寺を開かれた本願寺5世・綽如上人が後小松天皇から授与された聖徳太子の生涯を描いた「太子伝絵」。その絵解きを中心とした瑞泉寺の「太子伝会」のはじまりは、江戸時代中期に遡ります。瑞泉寺に伝わるそれらの虫干しの際、教えを説くことにすぐれた瑞泉寺12世・応現院真照が絵解きをしたことにはじまります。その後、地域での太子信仰の広がりとともに、参詣者も多く賑わうようになり、この地域にとってかけがえのない仏事として発展してきました。

井波に生きる方々にとって、幼いころに体験したこうした「太子伝会」の賑わいは今なお、印象深い思い出として残っているようです。

「太子伝会」名物・お斎の「さばずし」

また、「太子伝会」といえば、お斎としてふるまわれる名物料理「さばずし」があります。それは、約2か月漬け込み発酵させ、地元の方言で「くどく」(塩辛い味)仕上がったさばに、なす・メガネ麩・福神漬を付け合わせたお斎のお弁当です。その準備もご門徒さんによって行われ、まさに地域の方々と共に作り上げられる仏事となっています。

「木遣り町流し」の様子

今年も新型コロナウイルス感染症が拡がる中ではありますが、法要期間を短縮する等、感染対策をしながら勤められました。また、瑞泉寺の再建事業の際行われた献木の様子を再現した「木遣り町流し」等の行事は、3年ぶりとのことで、再開を待ち望んだまちの方々の熱気も強く感じました。

抹茶あんみつのかき氷「泉の氷」

そのような井波地方に伝わる年に一度の大切な仏事「太子伝会」と地域の方や井波を訪れる観光客をつなぎ、皆さんをお迎えするため、「テラまち雑貨店」でもかき氷や地元シェフがつくったフライドポテト「シャカシャカポテト」などの特別メニューを用意して当日を迎えました。

特に「泉の氷」と名付けられた抹茶あんみつのかき氷は、「井波」という地名の由来となった綽如上人の泉の伝説になぞらえ、クッキーの馬が添えられ、泉に見立てた抹茶のかき氷と一緒に召し上がっていただくというものです。これもまた、「物語のあるおみやげづくり」を志向してきた「テラまち雑貨店」ならではのメニューとなりました。

パネルを説明する本プロジェクトの業務委託を担った㈱studio-Lのお二人(写真右)

また、「テラまち雑貨店」に来店いただいた方には、これまでのプロジェクトや「テラまちコネクト」の歩みを記したパネルをご覧いただき、このたび完成した本プロジェクトの取り組みから得られた学びの内容をまとめた冊子『~僧侶がまちに出て仲間をつくるガイドブック~ まちとつながるために』も希望者に配布されました。

なお、冊子は下記よりPDFにてダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
⇒ https://jodo-shinshu.info/shienshitu/shien_pamphlet/

田中幹夫南砺市長や地元の中学生も参加して行われたシンポジウム

法要期間中には、文化財を活用した地域の活性化とふるさとづくりをテーマにした、井波別院瑞泉寺未来継承シンポジウム「瑞泉寺の未来像を探る」(主催:井波別院瑞泉寺未来継承推進委員会)や、シンポジウム「井波の未来を考えよう!2022」(主催:南砺市・井波地域づくり推進協議会)も連日行われ、それぞれ100名以上の方が会場となった瑞泉寺の本堂に集うなど、お寺を中心に発展してきた井波地域のこれからを地域の方々が主体となって考える場が広がっている様子も窺われました。

「お太子さまの香り玉ワークショップ」の様子

このほか、釈迦三尊像が安置される大門(山門)の特別拝観や、お茶会・生花展など、様々な催し物が境内で行われたほか、「テラまち雑貨店」においても、日替わりで様々なワークショップが開かれ、お参りの方や地域の方々に立ち寄っていただきました。
 

北陸にお越しの際は、ぜひ井波別院瑞泉寺にお参りいただき、山門前の「テラまち雑貨店」にお立ち寄りください。

「テラまち雑貨店」で扱う「物語のあるおみやげ」



「テラまち雑貨店」の営業時間等は、Instagram をご覧ください。また、「テラまち雑貨店」で扱う「ものがたりのあるおみやげ」は、オンラインストアー「テラまち雑貨店」でもお買い求めいただけます。ぜひご利用ください。





木遣り奉納踊りで歌われる木遣り歌には「濁悪邪見の我等には かの名号を与えてぞ 救いましますしるしには 深山の奥の埋れ木を 井波御坊の材木と 曳き出さる不思議さよ」など、仏法に出遇った人々の慶びも歌われる


なお、2023年春に真宗本廟(東本願寺)で勤まる宗祖親鸞聖人御誕生御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要期間中には、現代の井波彫刻師による東本願寺の彫刻ガイドツアーも企画され、「テラまち雑貨店 in 東本願寺」も企画されております。ぜひ2023年春の京都でも、井波の歴史と文化にふれていただけたらと思います。

太子伝会の夜に賑わう「テラまち雑貨店」と見事な彫刻が施された瑞泉寺の大門(山門)