御影堂の破風(はふ)須弥壇(しゅみだん)を豪華な黄金色で彩る金具。これは錺《かざり》金具と呼ばれます。「飾」と同じ音をもち、(かぐわ)しいまでに金で飾るという意味を持つといわれるこの漢字は、金属素材の装飾のことを指します。

 錺金具は、銅などの金属に下絵をもとに図案を描き、一本の(のみ)たがねを打込み、直線・曲線・点・文様を打出して装飾していきます。そして、仕上げに鍍金(ときん)(メッキ加工)や(うるし)箔押(はくお)しなどを表面に施します。

 破風は「風を破る」と書きます。瓦屋根は上から吹き付ける風に強く、横や下から吹き込む 風には弱いため、取り付けられた錺金具は、屋根内部への風や雨水の吹込みを防止する役割を果たします。先人たちはその機能だけでなく、金具に様々なデザインを施して、見た目にも美しくしたのです。

 錺金具は、破風だけでなく須弥壇や柱、襖の取手などにも使われています。これは、装飾のためだけでなく、つなぎあわせたり、強度をあげたり、合わせ目を隠したりすることが錺金具の主目的とも言えます。

 隠してもいい金具でさえその美しいさを見せるために、装飾をほどこして表につけることもあります。

協力:森本錺金具製作所(公式HPはこちら

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