御影堂や阿弥陀堂に入ると畳の(へり)がまっすぐにそろっていることに驚きます。この畳の縁はまっすぐ縫われているだけでなく、隣り合う畳の縁の紋が(つな)がるように仕上がっています。

 御影堂の縁は「豆小紋(まめこもん)」とよばれる東本願寺固有の紋が入った特別な縁が使用されています。この縁をまっすぐ美しく仕上げるためには、熟練の職人の技なくしてはできません。

 畳師は、厚い畳を美しくい上げるために肘を使い力強く縫い付けていきます。それは、「畳職、(ひじ)も道具のうちに入れ」という川柳があるほどです。そのため、畳師の利き腕はもう一方の腕よりも太くなるそうです。

 畳は、い草と(わら)、そして布地の縁など自然のものが材料となっています。先人たちは、畳表が傷んだ場合は表面と裏面を返し、さらに傷んだ場合は新しい畳表(たたみおもて)に張り替えます。畳床の藁を整えなど必要最低限のメンテナンスで長く使用することができるような方法を編み出しました。まさに、日本人の「もったいない」にあったものといえます。

 御影堂・阿弥陀堂の参詣の畳は1998年に新調していたため、2011年に完了したの御修復では、傷んでいるもの以外は表面と裏面を返し、傷んでいる畳はその度合いにあわせて、畳表を張り替え又は新調しました。

 このように畳師によって息吹を吹き込まれた畳は、この先も東本願寺を訪れる方々を心地よく支え続けます。

協力:疊三 中村三次郎商店(公式HPはこちら

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