表具の技術は、絹や紙などの弱い素材に描かれている経典や仏画などを保護するため仏教伝来とともに伝えられたといわれています。その表装には、紙や糊、布などの天然素材が使用されるため、次の時代に受け継いでいくために定期的な修理が必要となります。そのため、修復し再生することも表具師の大切な仕事です。
特に掛軸や絵巻物などは巻き取っ保管するため、次第に本紙が折れてきます。折れたところから損傷が広がるので、そうならないように裏から補強を行う「折れ伏せ」を施します。
「折れ伏せ」は、美濃和紙を約2mmから3mmの幅に裁断し、裁断した和紙に糊をつけて、竹箆(たけべら)で巻き取って本紙に貼る技術です。2mmから3mm幅の細く裁断した和紙の中央に折れた所がくるように貼り付けていくため、高い技術が必要です。そして、本紙に欠損がある場合は、補絹・補紙を施し、その欠損部分を同じような色で染めて仕上げます。
修理にあたる表具師は、軸や屏風、障壁画などそのものの修理をするだけでなく、そこにある情報や資料性を残しつつ、次回の修理のことも考えて修理を行います。そうした修理を繰り返すことで、過去の人々の記録が後世に残っていくこととなります。
今、私たちが過去の人々がどのように生活していたのかを知ることができるのも、そうした記憶を修理して次世代に伝えてきた表具師がいるからです。
協力:宇佐美松鶴堂(公式HPはこちら)