過疎化や、門徒さんの高齢化、後継者がいないという問題は、真宗教団が向き合う重要な事柄である。
三重県津市芸濃町、正寶寺の藤本愛吉住職は、近隣にある淨得寺の松井茂樹住職、願了寺の藤井静仁住職と、過疎地の方のための連続法話会を開催されており、3ヵ寺を会場に、年3回、3年間にわたって取り組まれている。開催のきっかけは、藤本住職が『真宗』に掲載されていた「過疎地での「地域連続法話会」の助成について」の記事を読んだことだという。
法話会の様子を取材した4月下旬、会場の願了寺では第2回目を迎えており、3ヵ寺のご住職、坊守さんを含めて、21名の方が参加されていた。
法話会は午前10時から始まり、藤井住職の調声で「正信偈」同朋奉讃を唱和された。その後、藤本住職による法話がおよそ1時間行われ、最後に真宗宗歌を斉唱し、終了となる。
藤本住職は法話の冒頭、本山の慶讃法要にふれられ、「本当のお参りとはなんだろうか」と問い掛けられた。そして「心に踏み込んで聴聞をすることに、お参りした意義があるのです」と語られた。
法話の中で時折、参加されている方々へ自然な口調で問いかけ、参加されている皆さんも、それに親しげに応えていた。藤本住職は、「今の時代は素直に言える場所が無い。自由な話し合いこそ無碍の一道」と仰っていたが、この法話会は誰もが自分の思っていることを、飾ることなく自然に言える場所となっていた。
連続法話会は、他の県でも行われていたが、継続が難しい実情があるという。人口が少なくなってしまった地域での伝道や、寺院の護持の難しさがますます露呈しているが、今回の取材では、ご門徒さんや地域の方々が、いかに仏法を大切にしているか、真宗教団への厚い思いを持っているのかを感じることができた。
私の住む地域も、過疎化や高齢化は深刻な問題となっており、過疎の地域での活動は、決して他人事ではない。参加された方々とのやり取りを通じて、大谷派僧侶の一人として、皆さんの思いに応えているのだろうか、と自分を考える契機ともなった。
(三重教区通信員・山田潤貴)
『真宗』2023年7月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:三重教区中勢二組 正寶寺(住職 藤本愛吉)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。