真宗大谷派約8,700か寺、そのほとんどが法人の設立の苦労を知らない。過疎が進めば寺院の合併・解散という話しばかりになるけど、
ご門徒が出てった先にお寺がなければ、そこにお寺を建てたいとがんばっている方もいる。
2019年4月16日(火) 宗教法人事務講習会
主催:能登教区過疎問題対策委員会/共催:能登教務所/会場:能登教務所
能登教区では過疎対策は予断を許さな状況にあるという危機のもと、2014年7月「過疎問題対策委員会」が設置されました。委員会では過疎対策の方途を探るため、まず実態を把握すべきとの判断から、2015年11~12月に教区内41ヵ寺を対象に聞き取り調査、2016年10月に全寺院を対象にアンケート調査を実施しました。
このたびの取り組みは、調査結果から見出された課題①住職・坊守等、寺族の責務、②寺院運営のサポート、③法縁を継続するための教化活動、④解散・合併をはじめとする法人事務、⑤過疎を対応するための体制づくりのうちの④解散・合併をはじめとする法人事務の取り組みです。
冒頭に、能登教区過疎対策委員会委員長 松山宗惠さん(能登教区第4組福專寺住職)のあいさつから始まりました。
まず、前記の開催までの経過の説明があり、そして、様々な教団の過疎問題の取り組として、
①寺院を活性化していこうという教団
②寺院の統廃合を積極的に進めようという教団
の2つに分類できるのではないか、なんとか支えていこう、兼務、解散、効率よく、いろんな考えや方法で動いている。
新聞などの情報によれば、物理的解体より法律的処理が困難であると聞く。その原因は、不活動寺院である・高齢で動けない・死亡によりいない等が挙げられると説明がありました。
【寺院規則はお寺にありますか?】
(講習1・2)「宗教法人の管理運営」、「各種申請・届出について」
「寺院規則はお寺にありますか?」の犬島主事からの問いかけから始まりました。
宗教法人は〝宗教法人法″に則って運営がなされなければいけないこと、そして、この法律は宗教的事項を決めるものでなく世俗的事項を規定しているもので、この法律によって宗教法人が財産を持つことができること、また、宗教法人法の特徴として
(1)認証制度・・・宗教法人の設立、規則の変更、合併、解散について、そのつど所轄庁の認証を得なければならない。
(2)責任役員制度・・・宗教法人には、必ず3人以上の責任役員(うち1人は代表役員)を置き、宗教法人の事務を決定していくこと。
(3)公告制度・・・宗教法人が重要な行為(合併、解散、財産処分等)をしようとするときには、門徒その他利害関係人に公告を義務付けている
など、基本的な内容から丁寧に進められました。
そして、よくある認識として
「代務者は住職が亡くなられたときに置くもの」
⇒住職又は教会主管者が欠けた場合において、すみやかに後任の申請ができないとき、②病気その他の事由により3カ月以上その職務を行うことができないとき
「責役は3人総代は3人を置く」
⇒宗教法人法によって責任役員は3人以上、宗教法人「真宗大谷派規則」によって寺院又は教会には、3人以上の総代を置かなければならないと定められている。人数を増やしたい場合は寺院規則を変更をすることができる。
等の内容にもふれ、所轄庁への提出義務のある代表役員・責任役員・総代の名簿の提出率は石川県で約92%、能登教区の責任役員・総代選定届の提出率は約77%、所轄庁から見るとこの差である約15%が、将来不活動化するのではないかという見方をしているとの説明もありました。
【寺院規則変更には寺院と門徒との十分な話し合いが必要です。】
(講習3)「法人事務の実務」
「あくまで一般的な規則変更、設立、合併、解散の手続きの流れをフローチャートにしています。お寺の状況はそれぞれです。寺院と門徒との十分な話し合いをして進めてください。」
規則変更、設立、合併、解散、聞いたことがあるけれども手続きしたことがないという方が多かったのではないでしょうか?
「宗教法人の設立って思った以上に時間がかかるし、必要な書類がたくさんある。」
「解散ってお寺に余力のない状態。だけど、責任役員会、総代会、門徒2/3の同意、公告、解散認証申請、解散及び精算人の登記と登記完了届、官報公告、清算、清算結了登記、清算結了届、やることが山ほどある。大変なことだ。責任は重たい。」
との声が聞かれました。
「設立に必要な書類は、解散・合併にも必要な書類になります。」、「これだけの手続きをしていくためには、寺院と門徒との信頼関係があってこそ。」、「合併や解散するときには所属門徒帰属引受書が必要です。最後まで丁寧にお預かりした門徒を受け渡していく責任があります。」と僧侶の姿勢として大事な点を押さえていきました。
【先日、税務調査がありました】
(講習4)宗教法人の会計について
最後に、宗教法人の会計について、印牧主計からの説明がありました。宗教法人の財産は門徒の浄財の上に成り立っていることをおさえ、法人と個人の会計を明確に区分する必要性、宗教法人済美精舎への税務調査の事例を紹介しながら、個人への謝礼の支払い・団体が法人でないばあい源泉徴収が必要であることの再確認をしました。
【最後に】
「平成7年(1995年)阪神淡路大震災、オウム真理教事件がありました。その中で宗教は何ができるのか、いったい何なのかを問われる1年だったと思います。」
「調査結果から能登はこれから合併・解散がますます増えていくと予測される。一方で新寺設立を考えたとき、所轄庁によって異なるが、おおむね3年の活動実績が必要であるが、大都市では新寺設立することそのものが難しい状況にあります。」
「私たち大谷派寺院のほとんどが、設立された法人を運営させていただいています。」
「設立当時のご門徒、地域の方々のご苦労をしのびお預かりしていく。そして、透明性、地域との信頼を大事にしていきたいとあらためて考えました。」
と篠原亨栄能登教務所長が所感を述べました。
2014年7月に設置された「過疎問題対策委員会」の調査に基いた「宗教法人事務講習会」。今回は約30名の参加者がありました。宗教法人事務の講習だからこそ、能登教務所まで聞きに来られた方もいらっしゃったようです。
「このようなかたちで講習受けたのは初めてかもしれない。住職修習でも宗教法人事務講習はあるけど、どうしても時間的制約がある。」
「資料をいただけたので、考えていくときのきっかけになりやすい。」
「責任役員さん、総代さんみんなに配りたい。」
「毎年やる必要ないかもしれないけど、3年に1回ぐらい確認していく必要があるかもしれない。」
との参加者の声もありました。
今後、能登教区では、今回の4/16中能登地区(能登教務所)、5/15奥能登地区(のとふれあい文化センター)、6/6口能登(第3山方組光濟寺)で開催予定となっています。
宗教法人として存立の足元から確かめてみる。そこから、お寺ができたこれまでの歴史に思いを馳せ、お寺とはどういうところか(原点)、門徒・寺族とともに考える(共創)、地域社会とのつながりを考えていくきっかけになるのではないでしょうか?
【参考】
宗教法人運営のガイドブック
http://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/kanri/pdf/h22_shukyohojin_unei_guidebook.pdf
真宗大谷派能登教務所ホームページ
寺院活性化支援室では、お寺の教化活動を一緒に考えます。