2025年5月金沢教区で、お寺を舞台に落語を楽しむ催し「おてらくご」が開催されました。今回で11回目を迎えたこの取り組みは、金沢市や白山市を中心に、真宗大谷派の27ヵ寺が会場となり、多くの来場者で賑わいました。
第1回目から中心となって開催されている金沢市の聞善寺住職、今井優悲さんにお話を伺いました。「おてらくご」のきっかけは以前に組内合同で行われた帰敬式の催し物として、落語家さんを呼んだことでした。この時に落語をメインで行うという構想が出来上がり、2013年に第1回が開催されました。最初は3ヵ寺で開催からの小さなスタートでしたが、第2回から組内のお寺に声をかけて徐々に参加するお寺が増加。自分のお寺でもやってみたいという声が組外からも寄せられるようになり、現在の27ヵ寺にまで拡大していきました。
法話と落語
この催しの特徴は、落語家さんの落語だけではなく、その前に正信偈のお勤め、法話が行われる点です。今井さん自身も初めはプロの噺家さんの前に法話をすることに緊張され、また苦労されている他の僧侶方の話も聞いていたようです。しかし最初は落語を求めて多くの方が来られていた印象でしたが、回数を重ねると「今回は法話も楽しみに来ました」という声も聞こえるようになったそうです。


今井さんには「おてらくご」を始めるにあたって、法話を聞くきっかけになればという思いもありました。その願いのとおり、日頃お寺に足を運ぶ機会の少ない人びとにとって「おてらくご」は新しいご縁の入口となっています。
笑いでつながるご縁、広がる輪
聞善寺では毎回100人近くの来場者が集まる「おてらくご」。本堂が満堂になる様子に、総代さんや門徒の皆さんからも喜びの声が上がります。新聞やテレビでも取り上げられ、地域での注目度も高まっています。
4人の落語家さんたちによって5日間で28公演が行われ、次々とお寺を移動していく様子は中々ハードなスケジュールに見えます。しかし落語家さんからは「お寺でたくさん話せるのが楽しい」と好評の声をいただいているようです。

また一部寺院では子どもにも落語に親しんでもらおうと、「こども寄席」を開催。白山市の真教寺では子どもたちが足を運びやすいように、着ぐるみのキャラクターやキッチンカーを配置し、わかりやすい演目が話され、本堂は子どもたちの笑い声に包まれました。
このご縁に落語にふれた子どもが、将来落語家を目指してくれたら、ということが今井さんの胸の奥にある願いです。

さらにこの取り組みは、地域の公民館からも「ぜひうちでも」と声がかかるなど、寺院の枠を超えて波及しています。
これからの展望
とても好評をいただいているこの「おてらくご」。日程も、関わるお寺の数も枠いっぱい広がり切った感触。これからも大事に続けていきたいと今井さんは話されます。
お寺の本堂に響く笑い声――それは単なる娯楽ではなく、笑いとともに仏教の教えがやさしく届く場になっています。これからも「おてらくご」は、笑いを通じて新しいご縁を紡ぎ、地域に生きるお寺としての役割を広げていくことでしょう。
(金沢教区通信員 藤 光弘)




























