龍樹大士
- 【原文】
釈 迦 如 来 楞 伽 山 為 衆 告 命 南 天 竺
龍 樹 大 士 出 於 世 悉 能 摧 破 有 無 見
【読み方】
釈 如来、迦 楞 伽 にして、山 のために衆 したまわく、告命
に、南天竺 龍 樹大 世に士 でて、ことごとく、よく出 の有無 を見 摧 せん破 - 【原文】
今回から、「正信偈」「
初めの「釈迦如来」は、申すまでもなく、釈尊のことです。真実に目覚められたお方を「
釈尊は、『
『楞伽経』によりますと、釈尊は、その楞伽山におられて、そこで、
釈尊が語られた、その予告といいますのは、ずっと後の世に、
龍樹大士の「大士」というのは「菩薩」のことです。古代のインドの言葉に「ボーディ・サットヴァ・マハー・サットヴァ」という言葉があります。この言葉が中国に伝えられましたが、中国には、これに当たる言葉がなかったのです。そのために、インドの言葉を耳で聞いて、それにもっとも近い発音の漢字があてはめられたわけです。このような方法を音写といっています。中国には、片仮名や平仮名がありませんから、音写するほかはなかったのです。
それで、インドの言葉を「
後の半分の「摩訶薩埵」のマハー(摩訶)は「偉大」という意味で、サットヴァ(薩埵)は先ほどと同じで「人」という意味です。このマハー・サットヴァは、「偉大な人」ということですから、これを中国語にあらためて、「大士」としているのです。
したがって、「菩薩」は、もとのインドの言葉の前半を音写して短くしたもの、「大士」は、もとの言葉の後半を中国語に訳したもの、ということになるわけです。結局、菩薩も大士も、釈尊が教えられた真実を顕かにしようとしておられる立派な人という意味になるのです。
龍樹という人は、西暦一五〇年ごろから二五〇年ごろにかけて、南インドで活躍された人であるとされていますが、年代のくわしいことはわかっておりません。伝説では、この人は、龍に導かれて大乗の教えを体得された人であり、樹の根元で生まれられた人であったので、「龍樹」と呼ばれるようになったと伝えられています。
この人は、釈尊がお説きになられた「縁起」という道理を、「
大谷大学名誉教授・九州大谷短期大学名誉学長 古田 和弘