【エンディングノート完成講座として】
熊本教区第3組、光照寺(熊本県宇城市豊野町)の副住職を務める糸山公照さんは、地域の方々が生活の中で困っていることをに注目し、僧侶としてできること、お寺と地域を結ぶこと、地域の人々が支え合って人生を考えていく様々な取り組みを行っており、今回ご紹介する「うきうき終活スクール」もそのなかの一つです。
この終活スクールの主催は、糸山さんが代表を務める一般社団法人「あなたの駆け込み寺」。熊本県地域共生くまもとづくり事業にも認定されており、熊本県民への福祉事業の一つとしての実績も納めています。
「エンディングノート完成講座」として開設されているこのスクールでは、「人生のゴールをどう迎えるか、どのような準備をしていくのか、一緒に考えてみませんか」との呼びかけのもと、主に宇城市に住まいする方々が集まって活動が展開されています。
講座は全11回からなり、スケジュールは下記の通りです。
第1回 開校式・家族関係図作成
第2回 老後にかかるお金の話
第3回 公開講座
第4回 認知症・成年後見制度について
第5回 日帰り親睦旅行
第6回 介護サービス・施設について
第7回 終末期の医療・尊厳死について
第8回 公開講座
第9回 葬儀やお墓について
第10回 遺影撮影会
第11回 相続・遺言について・閉講式
毎週第3金曜日の午後に開催され、定員は24名。駆け込み寺の会員になるには3,000円の年会費を払うだけで、無料ですべての講座が受講できることになっています(親睦旅行は別途)。駆け込み寺の会員ではない一般の方も、1講座500円で受講することができます。
会場は宇城市役所のとなりのウイングまつばせ(宇城市松橋町大野85)で、取材をさせていただいた8月は認知症・成年後見制度についての講義が行われていました。
【他業種の専門家による講座】
成年後見制度は、判断能力が不十分な方々を、法律面や生活面で保護したり支援したりする制度です。判断能力が不十分であることによって不利益を被ってしまう恐れがあるため、契約や財産管理を代わりに行うというものです。よって、専門家としては弁護士や司法書士、行政書士、税理士がその役目を果たします。この講座でも、数名の司法書士や行政書士が講義を行い、実際の相談の現場での話を、参加者に分かりやすく説明します。
行政書士には、不動産登記、相続手続き、成年後見、裁判手続きなど相談内容は様々ですが、特に、エンディングノート作成に有効な任意後見制度(今は元気だけど、将来判断能力が不十分となったときに備えて後見人を選定しておくための制度)についての説明に力点が置かれていました。
参加者の関心は、後見人には身近な人を選ぶことができるようだけど、だれにすることが一番安全か? 一回の相談でどのくらいの相談料が発生するのか?などでした。
「人生90年時代」と言われる現代社会のエンディングノートは、一般的には、自分の歩んできた歴史や病気、遺言、家系図、葬儀、お墓、納骨、財産についてなどです。地域の方々の不安もこのことに代表されているのですが、「仏教(お念仏)の教えをいただいてきたひととしての歴史」をいかに相続することができるか、そのようなことも考えながらの社会貢献事業であることが、今回の取材をとおして感じさせていただきました。
このほかにも、他宗教での相談窓口(カフェ デ モンク)での活動や移住支援の地域づくり団体の代表を務めるなど、糸山副住職の精力的なチャレンジは続きます。
お寺から地域に出て行く! お寺も地域に開放する。 地域の寺院が協力しあって子どもたちの活動の拠点となっています。