石川県金沢市を流れる浅野川。この川は「女川」と称され、金沢市民に親しまれています。この川の中流、金沢駅や金沢別院を望む瓢箪町に「ちりめん寺」と呼ばれるお寺があります。その金沢教区第8組聞善寺さんを訪ねました。
この聞善寺さんが「ちりめん寺」と呼ばれているのは、お寺に伝わる寺宝に由来しているそうです。その寺宝は金襴・縮緬の生地を豪華に駆使し、お釈迦様、聖徳太子、法然上人、親鸞聖人、蓮如上人などのご事蹟を立体的な造形で綴られた押絵が38枚の屏風で再現されているものであります。この押絵とはわかりやすく言えば、羽子板の技法をより高度にし、製作されたものです。この寺宝が縮緬でできているために、大正の頃から広く「ちりめん寺」と呼ばれるようになったのだそうです。この押絵屏風は、春の彼岸会法要にあわせて毎年開帳されています(「彼岸会押絵法宝物開帳」3月20日~23日)。
この「ちりめん寺」は古くから聞法の盛んなお寺です。まだ若い住職は「今はたいしたことをしていないので…」と恐縮されながら、「前住職の父や母、妹、家族に支えられているから」と、月1回の子ども会、夏にはお寺にお泊りや子ども報恩講など多くの行事が企画されたり、8月にちなんだ「平和の集い」、暖かい時期に合わせての『歎異抄』に学ぶ会など「一つ一つの活動は小さいけれども、私たちが人と出会いたいから、やりたいことを、やりたいようにやっているだけです」、「家族みんなのおかげです」と話してくださいました。
そして、この活動の拠点となるお寺という場所を「お寺というところは本来、人が入って来やすい場所ではないでしょうか」、「仏様のいらっしゃる場所なのですから、それがお寺の持つあたたかい空気というものだと思います」とご家族でおっしゃっています。
住職の言葉通りに普段から子どもたちが「お寺で遊びたい」と訪ねて来たり、一人手を合わせる人がいる。中にはキリスト教徒の方が熱心に歎異抄の会に参加されるなどご家族皆さんの願いがしっかりと受け止められているように思います。
ここ「ちりめん寺」は、真宗のお寺が持つ本来の、人と人が出会い語り合うところ、仏様を中心とした人と人との集いの場としてあり、それはお寺を中心として、それを支える家族の一つ一つの「小さな」出会いの取り組みが、それを縁にして訪れた人々を一つの「大きな」家族として迎えるあたたかい場所のようでした。
(金沢教区通信員 谷 涼雅)
『真宗 2010年(3月)』
「今月のお寺」金沢教区第8組聞善寺
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。
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