隠れ家的なカフェ。
隠れ家的なカフェ「一輪」の温かみある看板
寺カフェを始めたきっかけ

名古屋市港区の大音寺にはお寺だけでなく寺カフェ“一輪(いちりん)”というもうひとつの顔があります。

一輪という店名の由来は「皆さんがここで集まれる場所であってほしい」という願いが込められ、ひとつの輪=一輪と名付けられました。名付け親は代表を務める大音寺若坊守の西川さやかさんです。西川さんは調理師学校を卒業した後、フランスで料理を学び、帰国後はお料理教室を開いていました。

一輪を開くきっかけはお寺のご修復の際に調理場やお斎場を新しく造ることでした。西川さんの心の中には「お寺の仏事にしかお斎場などを活用しないのではせっかく建物を新しくしてももったいない」という気持ちがありました。そこで出来るだけ活用できる方法を考えた末、毎日カフェを開けば、気軽にお寺に寄ってもらうことが出来るのではという思いからカフェを開く決心をしました。

準備から開店
お店の看板の写真。皆さんが集まれる場所であってほしいとの願いが込められている
お店の看板の写真。皆さんが集まれる場所であってほしいとの願いが込められている

御両親である住職・坊守の承諾を経て、本格的な準備へ取り掛かりました。準備のために苦労したことは、メニュー作りでした。

最初はコーヒーを出せば良いと考えていましたが、コーヒーを出すならケーキも必要と考えました。そこからさらに熟考した結果、コーヒーとケーキだけでは人は来ないからランチも提供することにしました。スタッフは西川さん1人なので、メニューは日替わりランチ1種類。日替わりなので1種類でも毎日メニューを変えないといけませんでした。

またお店で使うお皿やコップの量は家庭と量が違うので、なかなか決めることが出来ず、食器などは慎重に選びました。シンプルなものが良いのか、華やかなものが良いのかということでも大変悩まれたそうです。それでも知り合いのお店の立ち上げ事業を携わっている方に立ち上げに必要な書類などについてアドバイスをもらい、順調に開店へと向かっていきました。

開店からの苦悩や喜び

そして開店したのが6年前。最初は準備や仕込みなどを全部1人で切り盛りしていたため、なかなか休まる時がありませんでした。また、お客さんが来てくれるかという不安や悩みで目が覚めても、起き上がることが出来なかったそうです。

日替わりランチ、本当に美味しいです!!
日替わりランチ、本当に美味しいです!!

またカフェを継続するにあたり、物が壊れるなどした場合、すぐに修復しないといけないという大変さもあります。ただ純粋にカフェやお寺に人が集まってほしいという願いから利益を考えませんでした。しかし、それだけではお店を継続していくことが出来ず、お店のものが壊れた場合にすぐに修復できるような体制を整えていないといけない難しさもあります。

しかし嬉しい出遇いもあり、近所のご門徒さんがよく足を運んでくれるようになり、親しくなりました。中には昔永代経などの仏事で来て現在来なくなった御門徒さんが、カフェに貼ってある仏事の案内を見て、再び仏事に足を運んでくれるようになってくれました。

取材を終えて

現在多い時では週に5日営業していますが、スタッフも五名に増え協力し合ってカフェを運営しています。西川さん自身も身体を休める日が出来るようになり、負担も減っているそうです。

取材を終えて印象に残ったことは、西川さんがとても楽しく一輪と関わっているように見えたことでした。西川さんの「お寺で何かをするなら楽しくやった方が絶対に続くし、楽しいですよ。ストレスになるようなことだと良くないと思います。」という言葉が頭から離れませんでした。

今でこそ明るく話してくれた西川さんだが開店時前後の不安やプレッシャーによる精神的な疲労は相当なものであったと思います。現在でも運営するにために試行錯誤しているなか、それが重荷やストレスになるのではなく、西川さん自身の生きがいになっているように感じました。

(名古屋教区通信員 木全 惇生)

寺カフェ一輪メニュー

カフェ一輪(facebookページ)