国の法律で「過疎」「みなし過疎」「一部過疎」と認定された地域などに講師を派遣し、「真宗の教え」に親しんでいただく「お寺に寄り添う講師派遣」

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山陽教区芸備組は、広島県中山間部の安芸高田市・三次市・庄原市がエリアで、寺院数は6カ寺あります。

支援員が2018年7月にお伺いし、お寺や組の現状をお聞きしました。

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過疎化・少子高齢化が進み、次世代の門徒は広島市に転居する方が多く、京阪神にも移り住んでいます。お寺離れや墓じまいも増加しているそうです。
山陽教区芸備組では2014年に推進員養成講座を実施し、その後「芸備組真宗同朋の会推進員連絡協議会(名称:六鳥会)」が発足して3年が経過しました。

これまで推進員としての活動や研修等を行うことがよいか模索し続けてきたとのこと。いろいろ考えた結果、組門徒会と相互に連携しつつ、聞法研修を通して同朋の会の推進に取り組むことが重要であるということに至ったそうです。
そこで、このたびの「お寺に寄り添う講師派遣」では、組の推進員と門徒会の連携と共同教化」という願いを踏まえ、

テーマ「真宗門徒としての私を再確認しよう」

で、組門徒会員・推進員・一般門徒・寺族を対象に合計46名にご参加いただきました。

寺院活性化支援室 過疎過密地域寺院支援 お寺に寄り添う講師派遣 報告【山陽教区芸備組】

 ◎芸備組推進員連絡協議会(六鳥会)・組門徒会合同研修会
(1)日  時 2018年10月16日(火)13:30~16:30
(2)会  場 山陽教区芸備組徳栄寺【広島県安芸高田市吉田町924】
(3)参 加 者 組門徒会員・推進員・一般門徒・寺族 合計46名
(4)講  師 髙桒 敬和 氏[研修部長] (5)テ ー マ 真宗門徒としての私を再確認しよう
(6)趣  旨 推進員のあり方・役割を学び直し、これまでの活動を振り返り、自らの確かめの会としたい。また、今回は門徒研修会(同朋総会)と併せて開催するため、「真宗門徒」としての私の歩みを確かめる内容とする。
(7)日  程
13:00  受付
13:30  開会(真宗宗歌、勤行、組長挨拶・六鳥会会長挨拶)
14:00  講義【40分】
14:40  休憩
14:55  寺別の座談会 ※講師への質問・意見を出す
15:15  休憩 ※座談で出た質問をスタッフで整理
15:30  まとめの講義【30分】
16:00  六鳥会(芸推協)総会
16:30  閉会(組門徒会長挨拶・恩徳讃)

■講義-あなたはいつから真宗門徒ですか?-
講師は本山より髙桒敬和研修部長が出向しました。

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講義では、まず講師の自坊の話から始まりました。「私のお寺は富山県五箇山という山奥にあり、集落のほとんどが真宗門徒で、真宗の歴史伝統が残っています。しかし、6割のご門徒は一人暮らしか夫婦2人暮らしで、しかも70代から90代で過疎高齢化が深刻です。」そして、

「ところで、皆さんはいつから真宗門徒になりましたか?」

という問いかけが。参加者からは 「嫁いでから」、「生まれたときから」「否応なしに」・・・という声。
講師は、「北陸で聞くと、“昔から”、“先祖代々”という答えが多い。しかし、私は“あ・な・た・は、いつから真宗門徒になりましたか?”と聞いているのです。真宗門徒は家のことですか?家が仏道を歩むわけではないでしょう。私は寺に生まれましたが、生まれたからといって真宗門徒であるということではないでしょう。私は宗門の学校である専修学院で初めて、親鸞聖人が歩まれた阿弥陀如来の仏道に出あいました。そして真宗門徒になったと感じました。」と語りました。

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■ご本尊は何ですか?
「北陸は蓮如上人が仏法を弘められて、その後、仏法を中心に国づくりが進められ、真宗王国と呼ばれました。百姓が持ちたる国として、浄土真宗の教えによって、民衆が誰にも抑圧されない平等なくにが続いたのです。しかしそこに前田藩が入って、根絶やしに殺されてしまったのです。」
「以前、テレビ番組の取材で、あるご門徒宅の立派なお内仏が紹介され、リポーターが、その主人に“ご本尊は大日如来ですか?”と尋ねた。そうしたら、主人はしばらく沈黙した後、“はい、そうです”と答えたのです。浄土真宗のご本尊は阿弥陀如来ですよね!?。門徒であってもご本尊がわからないのです。」

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■真宗門徒としての生き方―栗の木柱と後生願いに真っ直ぐなものはおらん―
「“栗の木柱と後生願いに真っ直ぐなものはおらん。”これは北陸で真宗門徒の生き方を表現したことばです。」

「栗の木は狂わない固い木だが、真っ直ぐなものはない。後生願いというのは浄土を願って生きる真宗門徒のことです。つまり、真っ直ぐなものはおらんということは、国家権力に迎合しない真宗門徒の生き方があったということです。真宗門徒は真宗門徒としての生き方があった。それが分からなくなってきたのではないでしょうか。」

「真宗門徒と名のっていますが、寺に属していたら真宗門徒なのでしょうか?何が真宗門徒なのでしょうか?あらためて考えてみないといけないことです。」

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■座談会
その後、それぞれのお寺ごとに分かれて、話し合いを持ちました。
【出された主な意見】
・生きるということについて、親鸞聖人の生活の価値観とはどのようなものか?
・五箇山の厳しい環境の中で、どうして教えが育ったのだろうか?
・生活環境や価値観の違う子や孫にどう伝えていくか?
・真宗の教えを聞いたら、どのように変わるのか?

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■参加者の声―桑田誠子さん―
「息子がね、“俺が帰ってくるまで、屋根と床だけは守ってくれよ”と言うんですよ。」
笑顔でそう話すのは、三次市の桑田誠子(よしこ)さん(善立寺門徒)。のどかな山間の集落の一軒家にご夫婦での二人暮らしをされています。

長男家族は福岡に住んでいるが、将来は地元に戻ってくると言ってくれているそうです。桑田さんは明るく朗らかな性格で、笑顔が絶えない。それゆえ、これまで町内の民生委員、善立寺の婦人会長も務められ、組門徒会員でもあります。

また、短歌や書道、墨絵の先生でもあり、誰からも頼られる地元になくてはならない存在です。

12月には善立寺の住職に来てもらい、お内仏報恩講を必ず勤めているそうです。この短歌からは報恩講
を勤められる喜びとご夫婦の愛情が伝わってくる。

■行ける時に電話してね、迎えに行くから
お寺で行事がある時はご近所のお年寄りをお誘いする。しかし最初から約束はしない。桑田さんが声をかけると、みんな無理しても行かなければならないと思ってしまうからだそう。
「行ける時に電話してね、迎えに行くから」と、優しく声をかける。また、「お寺の集まりではリーダーを決めないこと。その人一人が責任を感じてしまうから」と、仲よくお参りし合える工夫もされています。「みなさん、お寺に来たら知り合いが増えてよかったと言ってくれています。やっぱりつながりが大事」と語られます。

■これからのお寺の可能性
さらに「今後はお寺でお盆とお正月には生け花ができたら」「息子のお嫁さんが帰ってきた時、集まれるような場所に」と、これからのお寺の活用法も提案されました。きめ細やかな心遣いと配慮で、相手の事情や気持ちを思いやり、そっと寄り添うこと。
目の前の一人ひとりと向き合う桑田さんの姿勢は、過疎地域寺院支援で大切にしている共感の姿勢とも重なりました。

一番身近な方々がお寺を大切に思い、お寺を支えていらっしゃいます。その方々の声を丁寧に聞き取るところに、今後のお寺づくりのヒントがあるに違いないと思いました。

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■広島市で離郷門徒の集いを
庄原市西願寺住職の寺川大雅氏は、「次世代の多くのご門徒が広島市に移住し、墓じまいも増えている。今後、広島市に転居されているご門徒が集まれる機会を作りたい」と、地元寺院にアンケート調査を行い、離郷門徒の集い=「在広門徒の集い(仮称)」を検討されています。
ふるさとを離れても、地元のお寺とつながり、仏法のご縁が受け継がれることを願い、過疎・過密地域寺院支援では一緒に考えていきます。

★広島県内にある4つの組内寺院54カ寺に対し、「離郷門徒の集い」の立ち上げについて、アンケート調査を実施。(2018年6月)回答寺院は25カ寺(回収率は46%)。

◎離郷門徒の集いの立ち上げについて

「賛同する」は16カ寺=64% ※全体(54カ寺)では30%

・「賛同しない」・「何ともいえない」・「無記入」は9カ寺=36%。

※全体(54カ寺)では17%

◎「賛同する」と回答した寺院のご意見

・このような集いは在広門徒にとって有り難い。よろしくお願いしたい。

・広島市内の門徒の会があるが、世話人の高齢化で会が低調になってきた。

・過去に広島市内の門徒の会があったが、高齢化等で解散した。

・若い世代になると、郷里の寺への帰属意識が希薄化している。

・立ち上げには賛同するが、在広門徒は参加については積極的ではない。

・世代交代の中で、この集いに参加してもらえるかは、難しい面もある。

・面倒だと考える人もあるかも知れない。呼びかけの方法を考える必要がある。

・過疎の問題と共に、都市部での離郷門徒の共同教化を実現できればよい。

・広島在住の門徒が今後増える傾向にある。この会に期待したい。

◎「賛同しない」・「何ともいえない」と回答した寺院のご意見

・寺院後継者が別の道に進んでいる。

・以前は広島の門徒会があったが、高齢化により解散。

・広島市に出た門徒の次世代が広島を出ている。

・喫緊の課題ではない。

・少子高齢化で、寺を閉じるような傾向にある。

・広島市内と隣接する地域で、離郷という状況にないが、世代が変わるとこの現状が続くかどうかわからない。

・はっきりしたイメージが湧かない。

・本願寺派で行っている寺院の状況を聞いたらどうか。