寺院活性化支援員を派遣して、お寺の現状や課題、要望をていねいにお聞きし、寺族と門徒と一緒に教化の取り組みを考える〝寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院支援”
構想から約10年。2019年9月1日、広島市周辺在住の門徒の集いである「在広門徒の集い」が広島別院で開催されました。
小雨が降る2019年9月1日(日)。広島県内の中山間地域や島しょ部から広島市周辺に住まいを移された、広島市周辺在住の門徒のつどい「在広門徒の集い」の第1回目が開催され、広島別院に門徒13名郷里の住職や坊守13名が集まりました。
【経緯と趣旨】
この集いのきっかけは、今は亡き広島県中山間地域のご住職との会話から始まったそうです。過疎化を背景として、故郷を離れて広島市内周辺に移られたご門徒のことがしばしば話題になり、そこからいつか〝離郷門徒″が集える会をつくりたいという思いに至ったとのこと。「在広門徒の集い」という名称は、〝離郷ってなんだか寂しい響き″という思いから、広島市在住ということで〝在広″とされたそうです。
広島県が含まれる山陽教区では、2014年に宗祖親鸞聖人750回御遠忌法要が勤まり、離郷門徒の集いは一時棚上げ状態となったこともありました。
しかしながら、2010年に作った趣意書を見直し、関係各所との協議を重ね、離郷門徒のつどい開催への歩みを再開していきました。
2018年6月には、離郷門徒の開催についての意見を聞くため、広島県内60ヵ寺に趣意書と意見伺いを送付して意見の集約を行いました。
そして2019年1月、離郷門徒のつどいの具体的な進め方に関する意見を賛同寺院16ヵ寺から伺い、同3月に賛同寺院協議会として当日の会場となる広島別院で当日の日程や運営についての会議を持ちました。
その会議の中、
●住職ばかりで決めていくのではなく、賛同してそこに集った寺族や門徒で会を作っていきたい、育てていきたい。
●まずは声をかけやすいところから案内していくしかないけど、その輪を広げていきたい。
●2023年に本山である「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」に在広門徒の集いメンバーで団体参拝に行けたらいいな!!
という意見が挙がりました。
【当日の日程】~当日の日程はコチラです~
14:00開会【真宗宗歌斉唱・勤行/正信偈同朋奉讃】
14:20趣旨説明【この集いを開くに至った経緯と願い】 西願寺 寺川 大雅さん(暫定事務局)
14:30法話【「聞法生活」】本明 義樹 聖教編纂室主任編纂研究員(本山からのお寺に寄り添う講師派遣)
15:30協議会【法話の質疑/本日の感想と今後に向けての意見】
16:00閉会【恩徳讃斉唱】
同じ所属の住職・坊守・門徒は固まって、ご門徒は優先で前の方に座っていただき、「在広門徒の集い」が始まりました。
【願いが大事】~〝離郷″が〝離教″にならないために~
趣旨説明では、暫定事務局の西願寺 寺川大雅住職から在広門徒の集いの〝願い″が語られました。
一、郷里のお寺(もともとのお手次のお寺)との縁を大切にし、他寺への移転を防ぐ。
⇒法事・葬儀等の仏事を通してお手次のお寺とのご縁が切れないようにする。
一、広島別院を、真宗で最も大切にされてきた「聞法」の拠点とする。
⇒広島別院の法座へ参詣する等、聞法の機会と場を確保する。
一、賛同寺院が共同教化の場として御同朋ということを確かめる。
⇒賛同寺院が協力して在広門徒同士の交流と聞法を深める
一、真宗門徒の確かめをしていく場とする。
⇒それぞれの生活の在り方は違っても、親鸞聖人を宗祖とし、真宗本廟(東本願寺)を本山とすることを確認し ていく。
※この集いは広島別院の参詣者が増えることを願っていますが、別院門徒になるということではありません。また、他寺・他宗派の門徒になることを紹介するものでもありません。
「衣食住が足りてもままならない。手を合わせる生活の大切さを伝えていきたい。」、「一歩が歴史を作る、一人ひとりの一歩がつくっていく」と力強く述べられました。
【法話のはじまり「聞法生活」・・・真宗の感覚】
〈寺院活性化支援室〉過疎・過密地域寺院支援の施策「お寺に寄り添う講師派遣」により、本山から本明 義樹 聖教編纂室主任編纂研究員を講師として派遣し、「聞法生活」を講題に約60分の法話を聞きました。
キーワードは「真宗の感覚」
はじめに、自身のお寺での幼少期の体験、自坊でも仕事の関係から、ふるさとを離れて市街に出て行く方が多くなってきていることなど自坊での法務などの経験から振り返り、そもそも日常生活の中で自然と培われてきた「真宗の感覚」が失われてきているのではないかとの問題提起からはじまりました。
まず、聞法の「法」とは仏法のこととおさえ、「真宗の感覚」として
①「考え方」・・・何でもメリットやデメリットでやるやらない、聞く聞かないを決めてしまう私
②「場が失われる」・・・家族の単位が小さくなってきている。1人暮らし、2人暮らしが増加。お参りする姿を生活の中で見たことがない子どもが増えていっている。
そして、「法」には2つあり、
世法・・・世の中を渡っていくために必要な法(規則、法律、科学)⇒目が外側
仏法・・・いつか亡くなっていく身である私たちの人生そのものの悩み・問題などを解決する法⇒目が内
この2つ両方をもっているのが「真宗の感覚」であるとおさえ、親鸞聖人は「聞思して遅慮することなかれ」と躊躇することやおもんばかる(損得・意味があるかないか)ことなく仏法を聞いていきなさいと言われていると『教行信証』の一節を紹介しました。
その後、●104歳のおじいさんが亡くなる間際に何が欲しと聞いたら、〝お金”と言われ家族みんなびっくりしたエピソード(亡くなるとき本当にお金は必要か?いつまでも生きると思っている)、●ガンの妻が最後に作った食事のメニューをテレビに夢中で全く覚えていないエピソード(本当に大事なものが実は見えていない)、●白内障の手術を終えて目がよく見えるようになったおばあちゃんが、鏡を見て私の顔にはこんなにシミやシワが無いはずだと憤るエピソード(現実はなかなか見えていない)
などを紹介し、最後に、四顛倒(してんどう) 真実とは逆さまに生きている私たちについてお話しをしました。
【四顛倒】
①常(すべてのものは変わらずに続くと思い込んでいる)
②楽(人生は楽しいところだと思い込んでいる)
③我(自分という変わらないものが存在していると思い込んでいる)
④浄(人間は純粋で清いものだと思い込んでいる)
↓
①常ではなく無常(すべてのものは移り変わり固定不変なものなどない)
②楽ではなく苦(人生は楽しいところではなく、苦しみの世界である)
③我ではなく無我(固定不変の自分というものは存在しない)
④浄ではなく不浄(人間はどこを切っても醜くいエゴの塊である)
お釈迦さまは、〝一切皆苦″人の一生は苦と受け止めている。苦なるものを逃げずに受け止めて歩んでいくこと。そのことによって、生きる力と喜びが湧いてくると締めくくりました。
【やってみて・・・今後の展望】
法話の後には協議会が持たれました。最初はなかなか意見が出ませんでしたが参加したご門徒からは、
・「いいことだと思う。今後、田舎には門徒がいなくなってく。この年になって、お寺離れや宗教離れはいけないなと思えてきた。ふるさとから広島市街に出られた方がいるので、きちんとこのような集まりができるとありがたい。お寺が共同でやれるといいと思う。広島別院なら参加しやすい。やっぱり田舎までは遠い。」
・「オヤジたちが田舎のお寺の永代経や報恩講に自分を連れて行ってくれていた。お寺とつないでくれていた。だから、私もオヤジに習い子どもを田舎のお寺に連れて行っている。当たり前と思っていた。聞法の場が消えるとか、次の世代に伝えていくとかそんなことが課題になっていること自体知らなかった。」
・「お寺がなくちゃならないところから今後、消えていくような気がする。過疎にどう対応するか。今回の有志だけじゃなくて、今回参加していない寺院、組、教区、本山にとっても大きな課題。」
・「10年前に退職。仏壇を購入してお寺とのつながりができた。若い時には全くお寺のことなど考えていなかった。子どもにどうつなげていったらよいのか。お寺に行ったことない人たちが増えていく。」
・「経緯をしっかり説明してもらいよく分かった。願いの部分がよかった。」
・「聞法の機会を作るっていうことはいいこと。広島別院なら街での買い物ついでに行けそう。友達も連れてきたい。」
・「なかなか大人数だと意見が出づらいから、グループに
分けて今後の集いの持ち方について考えたらいいんじゃないか。」
・「現状、広島市街の門徒どおしのつながりがあるわけではないので、声をかける先が見つかりにくい。」
・「たくさん集まったらいいけど、来る来ないは結局その人次第だから来ないものは仕方ない。」
後半は積極的に発言する方が増え、「次回も開催したい」という声から第2回に向けての歩みを始めることとなりました。
第2回目の内容をどうするかということについては、検討する時間が十分になかったため、来ていただいたご門徒に所属寺住職が意見を聞くなど行う中で、協議しながら形づくっていくこととなりました。
構想から10年。様々な思いが重なる中での歩みだしです。僧侶と門徒でつくる「在広門徒の集い」の第一歩となりました。
〈寺院活性化支援室〉過疎・過密地域寺院支援では、「在広門徒の集い」について、協議会の参加、当日の準備協力、取材、「お寺に寄り添う講師派遣」による講師派遣、「離郷門徒のつどいの助成」というかたちで協力させていただきました。
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〈寺院活性化支援室〉過疎・過密地域寺院支援では、教化活動のきっかけづくりとしての「お寺に寄り添う講師派遣」、親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要を機縁として、過疎地域の寺院への声が寄せられてきたことから「離郷門徒のつどいへの助成」、お寺が共同しての聞法の場をつくる取り組み「地域連続法話会への助成」を行っています。詳しくは『真宗』2019年9月号(P150・P151)、しんらん交流館ホームページ(https://jodo-shinshu.info/kaso-kamitsu/)をご確認ください。
【広島別院お寺の掲示板】
寺院活性化支援室では、お寺の教化活動を一緒に考えます。