昨年より続く新型コロナウイルス。その影響で実際に集まって顔を合わせることが難しくなり法要や葬儀も規模を縮小せざるをえなくなりました。そのような社会情勢の中でも、どうにかしてお念仏のみ教えをお伝えすることができないか。そのひとつの手段としてYouTubeでの動画配信をはじめた大阪教区第二組宗恩寺の池田英二郎住職に、その思いやご苦労などをオンラインで取材させていただきました。今後YouTubeでの動画配信を検討しておられるご寺院の参考になれば幸いです。

 

◇一般社会との壁をなくす


――宗恩寺さんのYouTubeチャンネル「宗恩寺ちゃんねる」拝見させていただきました。お寺に関するさまざま動画が観ることができてとてもありがたいです。まずはYouTubeでの動画配信をはじめようと思ったきっかけを教えてください。

 

池田住職 私のお寺は大阪市内にあります。天王寺区という場所なんですがここは明治時代あたりから急激に人口が増えた地区なんですね。しかしそこから高度経済成長期に入り、地価が高騰したあたりから住民の入れ替わりが激しくなりました。ご門徒様も遠方に住む方が増え、地域住民の付き合いも薄くなっています。お寺との縁の薄い人が大半になった現在では、お寺と一般社会の壁を無くすために、まずお寺の日常を知っていただくところから発信していかなければと思いました。

 

宗恩寺住職の池田英二郎さん

 

YouTubeチャンネル「宗恩寺ちゃんねる」

https://www.youtube.com/channel/UC3zRSmBlJ3oG-Se73kcCkgQ/videos

 

 

◇動画配信は熱意と根気が必要


――実際に動画配信をはじめてみていかがですか?

池田住職 私が大阪教区の准堂衆会の会員ということもあってお勤めの動画が多いです。ほかにも法話、仏事解説などいろんなテーマの動画を作って、視聴回数や視聴時間のデータを見ながらニーズを探ったりしていますよ。対面してのお話と違い、動画は基本的に一方通行なので、あらかじめ台本を作って撮影していますし、テロップやBGMをつけたりもします。編集作業に思いのほか時間がかかるので、熱意と根気がいりますね。ただ品質を良くしたいというところで、どんどん新しい機材も揃えてしまいますし、編集も凝っていってしまいます。

 

春彼岸会 初日 晨朝兼日中《正信偈 草四句目下 念仏讃淘三》の動画

https://youtu.be/OkS3BQ7CI6o

 

動画作成の様子(撮影からYouTubeへの投稿まで)を説明した動画

https://youtu.be/JP5ngND1PQk

 

◇動画配信をはじめてよかった


――ご門徒様からの反響もあったのではないでしょうか?

 

池田住職 もともとは社会全体への発信が目的だったのですが、お寺に出向けないご門徒さん方にもよろこんでいただいています。「お内仏の前にスマホを置いてライブ配信をずっと観させていただきました」という方もありました。また直接質問しづらいこともメールやコメント欄への書き込みだったら聞きやすいかなとも思いますね。

 

動画撮影の様子

ーーなかなかお一人で撮影や編集を行なうのは大変だと思いますが、それでもはじめてよかった点もたくさんありそうですね。

 

池田住職 もちろん社会全体へ発信できるということが第一なのですが、この取り組みを始めてから変な話、自分の容姿や話し方への劣等感・嫌悪感がなくなりました。こうやって自分の動画を何度も見返しているうちにそのままの自分を受け入れるようになったんですね。これが私にとっては大きいです。また自分のお勤めの癖、直すべき点にも気づくようになりました。

 

動画編集の様子

録音・動画編集中

――それは大変興味深いお話です。最初は恥ずかしさもあるかもしれませんが、自分を客観的にみるいい機会なのかもしれませんね。それでは最後に動画配信で今後やりたいことや課題などお聞かせください。

 

池田住職 いろんな動画をあげたいと思っています。まずはお内仏のさまざまなパターンの動画ですね。お内仏のお荘厳や作法について説明しないといけないなと思っているんです。他にも親鸞聖人からずっと歴代の方々がバトンリレーしてこられた教えや儀式を、そのままちゃんと次の世代に受け継ぎお伝えしていきたいですね。そして本当にもう浄土真宗のことを好きになってもらいたいと思っています。あと課題というか、もしかしたら今後動画の内容に対してさまざまなご意見をいただくこともあると思うのですが、ぶれない姿勢が必要だと思っています。

動画配信は熱意と根気が必要ということでしたが、新しい発信の形を模索し挑戦を続ける池田住職のお姿に共感しました。今後ますます聞法の場が減少していくことが危惧されているなかで、仏法にふれることができる入口を増やすことの大切さを学びました。

(九州教区通信員 佐々木信行)