寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院教化支援では、寺院活性化支援員を派遣し、お寺の現状や課題、要望をていねいにお聞きし、寺族と門徒と一緒に教化の取り組みを考えています。

新型コロナウイルスの感染拡大で2021年4月から延びに延びましたが、12月8日、滋賀県長浜市木之本町にある明德寺さま、余呉町にある景好寺さまにお伺いしました。

目的は、寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院教化支援講習(専門講習)のカリキュラムの一つ、「聞き取り表」を用いてお寺の聞き取り調査をするためです。

【明德寺】

明德寺さまでは、前住職、坊守、前坊守、責任役員、総代さま方にお集まりいただきました。

明德寺さまは慶長年間(1600年代)に教如上人から絵像の阿弥陀如来を受けられ、後の寛永10年(1633年)に木像の阿弥陀如来像をいただき今に至り、2020年に住職継承しましたが、数えて16代になるそうです。

前住職の秦信映さんは30歳で入寺されましたが、その頃はお寺に教化・子どもの集まりということが全くなかったと振り返られました。

2020年にお寺の教化委員会をが発足したそうですが、その歩みは、長浜教区や長浜教区第24組の教化事業に積極的に関わったことと言われます。

「〝まず、聞いてやってみよう”という気持ちでやり、関わり続けている中で周りに仲間がいた。いろいろ試して上手くいったら続ける、上手くいかなかったらやめるの繰り返しだった。」と語られました。

そして、17年も続いた「長浜別院・五村別院の離脱問題」は前住職ご自身も含め、長浜教区全体の問題としてお寺そのものを改めて考える転機となっているとのことでした。

【離脱問題については、『長浜・五村別院離脱問題 学習資料集』真宗大谷派 長浜教区発行(2019年4月)】

(抜粋)

その中で確かめられたこととして、寺が本来の聞法道場として機能を回復し、時代の要請に応えていける開かれた寺の誕生を願うとき、住職と門徒が共に歩むことの大切さを確認した

そして、離脱阻止の取り組みの中で沢山の門徒の方々に了解して参加してくださり、次第に僧侶と門徒の隔てが無くなってくることをお互いに感じることができた。そして、「寺を開く」をテーマに3つの目標を掲げて取り組んでいくことを確認した。

① 寺の役員は公選によって選ぶこと

② 必ず月例の役員会を開催すること

③ 同朋会を開催すること

さらに、問い続けることとして

①お寺は何のためにあるのか

②お寺は誰のためにあるのか

③真宗門徒になれているのか

がある。これを実直にやってこられたとのことでした。

明徳寺ホームページには、年中行事やミニ法話、寺報もあってかなり充実しています。しかしながら、将来に向けての課題やお悩みもあるとのこと。

●本堂の屋根葺き替えや基礎の耐震対策など大規模工事の費用について

⇒長浜教区は1カ寺あたりの門徒戸数は少ない。しかしながら規模の大きい本堂が多く、大規模営繕に対する一戸の負担が大きい。本山から何らかの支援が得られたら・・・

●転居が増え、親と同居する若者が減っている

⇒仏事、地域のさまざまなことの継承が難しくなっている。がんばっていても門徒戸数が減っていく。

【地域に残されている言葉】

「まんまんちゃん」・・・手を合わせてお参りすること

「おさがりさん」・・・仏前のお供えのおさがり

「休んでもらいましょ」・・・十分使ったものを残念ながら捨てるときの言葉 例)使い古した靴を残念ながら捨てる

「黒いもんですけど」・・・御仏供米をご門徒が持って来られるときに使われる。謙遜した言い方

「もろた」「さずかった」・・・赤ちゃんの誕生

「まいらせてもろた」・・・人がなくなったこと。浄土に参った。

【景好寺】

景好寺さまのある旧余呉町は、総務省の「過疎地域自立促進特別措置法」(2021年3月まで)によりますと、一部過疎の地域に該当します。堂宇は新しく立て直されたという外観でありました。本堂でお話をお聞きしました。

【歴史】

もとは真言宗で奥善寺という名前であった。天和2年(1682年)・教如上人の時に浄土真宗に転派したとの記録がある。一如上人の時に景好寺と名称を変更した。昭和46年北陸自動車道開通に伴い、現在の地に移転し、昭和52年4月に堂宇を建立。

【現状】

余呉は長浜市街といつも2℃はちがう。

もともと門徒戸数も少なかったが、平成6年頃17戸あった集落も現在はわずか6戸。その中でも人の関わり方の篤い方もいればそうでもない方もいる。※江戸時代・元禄には80戸あったとか

住職もいなく、秦さんが組長をされていた頃から継続して勤めていただいている。お寺では習字やそろばんを習ったんだ。

住んでいたところから離れても門徒のままでいてくださればよいが、続けてくださらない。関係性の継続の問題、金銭的な問題があるからであろうとおっしゃられました。

小さなお寺(経済的にお寺だけでやっていくことが難しい)の住職後継者の問題は切実。大変なことが分かっているなかで是非やってほしいと勧めることは困難なことだと思う。門徒戸数が全国的に少ない長浜教区であってもそのような状態なので、他の地域でも難しいと思う。そんな中で組長の責任として代務者を引き受け、今も継続いただいている秦さんには感謝しかないとのことでした。

※組織はあるけど人で動いている

景好寺にも懇志を出し、別院にも、本山にも、なかなか大変。別院でもう少し何とか・・・

蓮如上人御影道中のお立ち寄りのお寺になっている。大変ありがたいと思う一方で、こうも門徒が減るとお迎えする人も経費も大変になってきている。

【この先に】

なくしたり、やめたりすることはとても簡単なこと。だけど、やり方を考えて仕組みで何とかできないかと思っている。

「逆三角形じゃなく、底辺が広い三角形の組織がいい」と言われた言葉がとても印象的でした。

切実なお話をお聞かせいただきました。今、何かできることは特にお話の中で見出せませんでしたが、必要な時に関わっていくことで当日の聞き取りは閉会しました。