伝道掲示板 

故郷というのは

自分がつくったものじゃない、

自分がつくられた場所です。

(藤元正樹『地上に立つ宗教』)


日本海へ南北に突き出た能登半島の西側、「能登金剛」と呼ばれる風光明媚な海岸線にほど近い集落にある西方山柳泉寺。境内にある掲示板は1993(平成5)年に地元篤信者が寄付したもので、2014(平成26)年、住職に就任した谷内柳宣さん(55)が法語の掲示を父の宣雄さん(82)から引き継いだ。


「掲示板」の前に立つ谷内柳宣さん(住職)と宣雄さん(前住職)

しかし宣雄さんはそのあとも思いついた言葉や気になる法語に接すると、筆をとってきた。節談説教の第一人者と言われた川岸不退師(1928─2020)の弟子として三年半、師の布教に随行した経験がある宣雄さんは、長らく説教師として各地を歩いた。「だからでしょうか、今でもお説教に活かせる言葉に出会うと書いてしまうんです」。


一方の柳宣さんは大谷大学を卒業後、30歳で寺に入る。しばらくして、知人の紹介で七尾市の造園店に勤務。庭師の仕事が性に合ったのか、今は独立して「住職と庭師」の二足の草鞋(わらじ)をはいている。


   今も時々筆をとり、法語を書いている宣雄さん

柳宣さんが掲示板に貼る法語は、文字と写真の組み合わせが多い。「どうしたら注目してもらえるか、試行錯誤の連続です」と言う。写真は、15歳から5歳まで4人いる娘さんのスナップが主で、仏典やさまざまな書籍から引用した言葉を写真に重ね、パソコンでデザインしてプリント。A3用紙を何枚かつなげて大きくする。更新はひと月かふた月に一度のペース。



4人の娘さんの写真と組み合わせ作成した法語について説明する柳宣さん

「掲示板の言葉は、教えを押し付けるものではないと思う。見た人が、よく分からない言葉かもしれないけど、各自の心にとどまり、何かの折にその言葉が心の奥の引き出しから湧いてくる。それが私の掲示板活用術の理想です」と話す柳宣さんだが「ただ、どれだけの人が見てくれているのか、手ごたえが分からなくて…」とも。


2021(令和3)年の年明けから、柳宣さんはこれまでの掲示板に加えて、新たな”掲示板”に挑戦している。月に一回の予定で、法語に関する自身の思いや、身の回りの出来事を綴ったエッセイなどを編集したリーフレットの発行だ。裏面では、2020(令和2)年11月に柳泉寺を訪れたアーティスト、村上慧さん(発泡スチロールの家で全国行脚する移住生活者)との出会いに関するエピソードを連載している。村上さんから大きな刺激を受けた柳宣さん。昨年12月の境内の掲示板には、村上さんの著書から次の言葉が引用されていた。

「なんで僕は仕事をしてるんだろう~移住を生活する~村上慧」





(能登教区通信員・経塚幸夫) 

『真宗』2022年2月号「お寺の掲示板」より

ご紹介したお寺:能登教区第四組(住職 ()()()宣)()※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。