福善寺は香川県の県庁所在地である高松市の中心部の繁華街、四国教務所に隣接してある。大変歴史が古く、高松市政のはじまりの地でもある寺院である。
福善寺をたずねると、釋氏信昭住職が温かく出迎えて下さった。釋氏住職は、時代の移り変わりと共に変化していく人々の悩みに少しでも寄り添える住職でありたいという思いをモットーにされている。
福善寺では、あらゆる人にお寺という場にご縁をもっていただきたい、親しみをもっていただきたいという思いで、福善寺コーラス部「鸞」や、パッチワーク教室などのカルチャー教室や子ども会を開いている。釋氏住職のお母様で、前坊守の祥子さんに詳しいお話を伺った。
コーラスを始めることになったきっかけは、今から22年前の2000年に遡る。『真宗大谷派勤行集』の最後にある仏教讃歌について、御門徒の方々にこれはいつ歌うのかと尋ねられたことがきっかけとなり、一緒に調べて練習を始めた。最初は4、5人が集い練習していたというが徐々に参加者も増え、福善寺での披露のほか、真宗本廟での音楽法要やコンサートにも参加。2007年には中国南京大虐殺70周年平和法要及び南京記念館落成記念友好訪中団にも合唱団として7人で参加された。
また、福善寺でカルチャー教室として開催されている「パッチワーク教室」は、福善寺の学習室にて、講師の先生を招いて月に2回ほど活動されている。ご門徒の方々が10人前後参加され、毎回違ったテーマで作品を作り上げており、今までにかばんやベッドカバー等を作っている。
そのパッチワーク教室でできたつながりを縁に、お寺の行事のお手伝いに参加者同士で誘い合うなど横の繋がりが増え、お寺という場に深く携わってくださるようになった方もおられる。また「今までお寺と少し疎遠だった方も、お寺の法要にお参りされることは勿論、お寺へ来ることを楽しみに思ってくださることが、大変有難い」とのこと。そして、「お寺という場は敷居が高いものではなく、皆が気兼ねなく戸をたたき、色々なお話ができる場となることが理想」であると祥子さんは話された。
現在は時代の移り変わりと共に、寺院離れや宗教離れが進む世の中である。そして、寺院に行くということに抵抗感を抱く方もいると聞く。本来、寺院という場は誰もが来られる場所で、共に平等に仏の教えを聞き、そこで得た御縁を大切にする場である。寺院というものに対するネガティブな思考を少しでも払拭し、誰しもが気兼ねなく来られる拠り所となっていかなければならないと、あらためて考えさせられた取材となった。
(四国教区通信員・河野一道)
『真宗』2022年10月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:四国教区東讃第一組(住職 釋氏信昭)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。