聞法会が始まる20分前から、本堂の中は参詣者の方々の賑やかな声で満たされている。名古屋市の北区にある(かい)(せん)()で開かれる「(ほう)(ゆう)(かい)」は1960(昭和35)年から始まり、今日(こんにち)に至るまで60年以上にわたって一度も途切れることなく続いている聞法会である。毎月開催される「朋友会」は、住職・若院が縁のある講師を招き、14時からの前勤めの後、法話を参加者の方々に聴聞していただくという流れとなっている。


開闡寺境内

「お寺の役割というのはやはりどこまでいっても教えを伝える、ということに尽きると思います。自分が聞かせてもらい、皆さんにも聞いていただく。それが基本だと思っています」。住職の小嶋久佳さんは穏やかな表情でそう語る。「朋友会」の発足について伺うと、「もともとは先代の住職、私の父が開いた聞法会なんです。父は熱心な人で、自分が大切に受け止めた教えを人に伝え、自身の生活の中でも伝えた教えを実践してきた人でした」と。また今回、取材にご協力をいただいた坊守の小嶋(よう)()さんは、「私がここに嫁いで間もない頃、前住職から聞いた言葉が、『これほど素晴らしい教えは伝えずにはおれない』、というものでした。それが今でも心に残っています」と語る。教えを「伝えたい」ではなく「伝えずにはおれない」という前住職・小嶋(えい)(しゅん)さんの姿勢と情熱が、60年以上にわたって相続されてきた「朋友会」の根底には流れている。


「この会は、さらに言えば開闡寺は、ご門徒の皆さんに盛り上げてもらっているんです。今月も、朋友会がはじまる前に皆さんが内陣の仏具のお磨きをしてくださいました。ありがたいことに皆さん積極的にお寺のことにたずさわってくださって、お寺に住んでいる私たちよりもお寺のことをよく知っているくらいです」。そう語る久佳さんの言葉は、現代社会の中で見失われつつある寺院の役割と、ご門徒とのつながり方を確かめ直す問いかけに聞こえた。

「朋友会」での法話の様子


小嶋さんご家族

「お寺という場所の敷居を低くしたいという願いがあります。誰でも気兼ねなく訪ねてくださり、お参りをしてくださった方に楽しかったね、また来たいね、と思ってもらえるような場をつくりたいと思っています。それがいつまで続くのかはわかりませんが、できるならば次の世代、その先の世代にもつないでいきたいと願っています」。久佳さんと要子さんは声を揃えてそう語られる。教えを伝えるということと、聞くということは別々のことでなく、一つであるということを教えられた。そしてそれが形となってあらわれているのが「朋友会」であるように思う。


(名古屋教区通信員・荒山 優)


『真宗』2023年4月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:名古屋教区第十八組(住職 小嶋久佳)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。