伝道掲示板 

みずからの、

おのおのの戒善、

おのおのの自力の信、

自力の善にては、

実報土にはうまれずとなり

(親鸞聖人『唯信鈔文意』)




富山県砺波市はチューリップ栽培が有名で、春には「となみチューリップフェア」が開かれ、全国から多数の来場者が訪れる。そして光圓寺がある野村島は、田園の中に家々が点在する「散居村」の中にある。光圓寺は特定の所属門徒を持たない、地域のご門徒により支えられている「在所の寺」である。


現在住職を務める市川峻さんは、結婚を機に15年前に夫婦で入寺し、日々教化活動を展開されている。

掲示板と、登校の際にお寺の前に集合する子どもたちとともに

その中でも「お寺の掲示板」の存在は重要だと市川さんは語る。入寺した時にはすでに掲示板がお寺の前と地区の公民館の前に設置されており、教えをいろんな方に感じて欲しいとの前住職の願いを受けて、月に一度のペースで法語を掲示されている。


家が点在している散居村とはいえ、近隣のご門徒や農作業をされる方がよく掲示板を見ているという。お寺の近くには古民家を改修してできた宿泊施設が開業されており、掲示板を見ていく宿泊客もいる。また、市川さんの2人の子どもが学校へ集団登下校する際の集合場所がお寺の前になっており、子どもたちの目にも留まる。時々「何を書いてあるの?」と意味を尋ねる子どももいるという。また、ご門徒のお宅へ月命日のお参りに行った時も、掲示板の言葉についてしばしば話されることもあるという。


市川さんが今まで書かれた掲示板法語


砺波市は、少子高齢化が進む地域で、一人暮らしの高齢者が多く、不安を抱えている方も多い。地域の民生委員も務める市川さんは、「お寺の役割は大きい」と話す。ふと立ち止まって見た掲示板の言葉が心に響いたという声も聞かれる様になってきている。


市川さんが、掲示板を書く時に気をつけていることは、まず手書きで書くこと。印刷したものでは、どんな言葉を選んでも、なかなか相手に気持ちが伝わらないという思いから手書きにこだわっている。



聖人のお聖教の言葉もよく用いるが、一般の方や子どもの目にも留まりやすいようにルビを付けたり、イラストを添えたり、時には自分なりの言葉で書くこともあるという。 お寺にとって、掲示板は教化の上で重要なアイテムで、お寺と地域と人をつなぐ、コミュニケーションツールとしても大切だと市川さんは話す。言葉の意味を尋ねにお寺に足を運ばれたり、実際に掲示したものをもらいに来る方もおられるという。また、実際に掲示板を見た方がお寺の行事に参加されるケースもあり、「どんな形であれ、お寺に足を運ぶきっかけになれば」と市川さんは話されている。


時には法語にイラストを添えることも


(高岡教区通信員・竹部俊樹)

『真宗』 2023年6月号「お寺の掲示板」より

ご紹介したお寺:高岡教区第二組 光圓寺(住職 市川 峻)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。