淨流寺は、日本のほぼ中心にある郡上八幡から東に峠をふたつ越えた郡上市和良町にあり、「和良鮎」ブランドで有名な清流和良川が町内を流れ、自然豊かな山里にあります。峠の斜面には残雪があるものの春の訪れを感じる3月5日、淨流寺で勤まる「月次合同法要つきなみさま」に合わせて取材に伺いました。この法要は、淨流寺の過去帖に記載のある過去50年分の物故者等の祥月法要並びに合同永代供養墓での読経があります。そして、4人のご子息もそれぞれの役割を果たし、寺族全員で大切に仏事を勤められ、さらにSNSでのライブ配信も行うなど、お寺の歩みを少しでも多くの方にふれていただく工夫に、ご住職の篤い思いを感じました。

本堂での月次法要の様子

ご参拝の方に優しく語りかける北村住職

住職の北村雄平さんは在家のご出身ですが、縁あって15年ほど前に淨流寺に入寺されました。しかし、淨流寺がある和良町は、郡上市の中でも高齢化率が50%に迫る地域であり、また過疎化も急激に進む地域の中でお寺を護持することの困難さに直面しました。当初はこの淨流寺に入寺したことに後悔した時期もあったそうですが、「小規模寺院でも、お寺はお寺、身動き取りやすいからこそ出来ること、やりたいことをやってみよう!」と発想を転換させて取り組んでいくことを決意されました。具体的には、地元の高校生に書いてもらった法語ポスターの作成、SNSでのお寺の情報発信、「公認心理師」の資格取得など、法務と共に「今何ができる?」を常に問いながら日々模索されています。

取材当日の法要でも、お寺のホームページをご覧になった方がお参りされ、新たなご縁が生まれ繋がる様子が見られるなど、確かな歩みが重ねられています。最後に住職は「これから、この寺が今までどおりのカタチを維持していくことは物理的に困難である。しかし、真宗大谷派に属する僧侶のひとりとして、社会の中で果たすべき役割は無限にある。それは、宗祖親鸞聖人の「非僧非俗」の歩みにどこか通じるものがあるのではないか」と話されます。


淨流寺から組・教区に広がった法語ポスター

今の世の中、宗教離れによる「心の過疎化」が顕著です。お寺の規模により事情は様々ですが、お寺の中だけにいる僧侶で良いのか、法務だけを淡々と行う僧侶で良いのか、私自身も一仏弟子、お寺を預かる住職としての「これから」に問いをいただく取材となりました。


そして、最後の言葉は、一緒に話を聞いていた4人のご子息にとっても、一仏弟子としての自らの歩みを問うものとして、心に刻み込まれたのではないでしょうか。




(岐阜高山教区通信員・川並秀樹)


『真宗』2023年6月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:岐阜高山教区第十五組 淨流寺(住職 北村雄平)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。