柳宗悦と民藝との出会いは、朝鮮王朝(李朝)時代に朝鮮半島で焼かれた、染付の壺に出会ったことでした。

 ソウルで小学校教師をしていた浅川伯教が、柳の元にあったロダンの彫刻を見るために持ってきた手土産がこの染付の壺でした。


この白磁の肌の壺に関心を持った柳は、その後、朝鮮を訪ね多様な工芸があることに感銘を受けます。

 そして、調査・蒐集を始め、甲府でさらに運命的な出会いがありました。それは、江戸時代後期の僧侶、木喰五行(1718年~1810年)が彫った独特の笑みをたたえた仏像「木喰仏」でした。

 特定の宗派に属さなかった木喰上人は、昼は医療を施して人々を助けながら、全国を遊行し1,000近い仏像を彫ったとみられています。

 私は即座に心を奪われました。その口元に漂う微笑は私を限りなく惹きつけました。  

  
(柳宗悦「木喰上人発見の縁起」)

 前へ   次へ