明治政府が推し進めた西洋を模した近代化は、急速に人々の生活や価値観を変化させました。

晩年に柳宗悦は若き日について、このように語っています。

今までの東洋的文化を一途に古くさいものと感じ、西洋のものこそ新しい生活に役立つのだと思えた。又日本を新時代に導く力は、西洋の宗教であり、哲学であり、文芸であると思えた。(中略)
東洋のものはほとんど貧弱な常識をでることがなかった。どんなにえらいものがあったとしても、東洋的たるの故、顧みる気持ちがなかった。おくれた表現だと一口に片づけたに過ぎぬ。(中略)キリスト教は私に大きな魅力であった、儒教はもとより、仏教如きは、全く時代にそぐわぬ宗教に過ぎないと考えられ、将来日本を救うのはキリスト教だと考えられた。


柳宗悦『仏教に帰る』

柳宗悦は、近代化による都市化・工業化の意義を認めつつ、それまで全く注目されてこなかった日用品の中に暮らしの美という新たな価値観を見出そうとしました。

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