地域のお寺としてのあり方

時代と共に人びとの考え方や価値観が変わり、お寺に行くのはお盆や法事の時だけという人が増える今、お寺でカフェやヨガなどさまざまな企画がされています。

そんな中、新潟県十日町市にある正念寺では、寺院で葬儀を執り行うことで『お寺が人の集まる場』となる寺院運営に取り組まれています。その取り組みについて、渡辺正志住職と、ご門徒の千原祥一さんよりお話を伺いました。

千原さん(左)と渡辺住職(右)

「本堂を新しくしようという思いがずっと前からありました。建て替えを機にお寺をどういう場所にするかと考えた時、やはりお寺本来の仏事・お葬式をやることで、そこに人が集まるという場にしたかったんです。ご遺族はもとよりご門徒さん以外の方も集まってくださるし、お葬式の場で一つの法座ができるというのが一番の狙いでした」と住職。

改修前本堂での葬儀

しかし、セレモニーホールでの葬儀が主流となっている現代、加えて田舎ならではの関わりもあり、ご門徒さんへのお伝えは丁寧に進めたそうです。「月のお参りの風習がない地域ですが、祥月命日にはお参りに伺いました。そうやって繋げるという取り組みから始め、広報紙をお渡ししてなるべく直接お話をしました。その甲斐があってか、お寺での葬儀に力を入れ始めて9年目の今年は、寺院葬が66%・ホールでの葬儀が33%までになりました」と、ご門徒さんの意識に変化を感じているそうです。

実際に正念寺の本堂で葬儀をされた千原さん。「2年前の母の葬儀の際に本堂で行いました。日ごろから住職にお話を聞いていたので、まずお寺へ電話をして自分の車で母をお寺へ運びました。その時は庫裡の立て替えをしている最中だったので、本堂へ母を安置し、棺の横に布団を敷いて寝ました。忘れられない貴重な経験です」と話されます。また「コロナ下だったこともあり、簡素化しても周りが納得してくれるかな、本来なら失礼に当たるのかなという心配があったことも事実です」と。しかし、会館での葬儀では全てにランクがあり値段があり、値切るわけにもいかない雰囲気があるけれど、お寺での葬儀は奥様やお子さんとお母様の写真を貼ったコルクボードを作って飾るなど、自分たちも一緒に葬儀をつとめるという気持ちが持てたそうです。

庫裏大広間での葬儀
庫裏大広間の祭壇

祭壇等の準備は住職、宿泊等の準備は坊守さんが行います。常に使える状態に整えてあるそうですが、深夜に電話がかかってくることもあります。そこで、あえて倉庫は設けず備品はわざと見えるように片づける、という工夫をされています。そうすることで必要なものは各自で見つけて使用し、各自で片づけてくれるのだとか。建て替え中の本堂は、十日町という土地柄、冬あたたかく過ごせるようエアコンがつくそうです。

宿泊部屋

「仏事がどんどん少なくなり、お寺の維持運営は難しくなっています。そしてこの辺りは過疎化も進んでいる地域で、なおのこと危惧しているところです。田舎では冠婚葬祭の会場が大体一緒の会館。過疎が進めば、冠婚葬祭の【婚】が圧倒的に少なくなりますので、【葬】に力が入るのは当然のこと。亡くなったらまず葬儀屋さんへ電話という流れが既にありますが、そこをまずお寺に電話していただく、何時でもいいからまずはお寺へ。最初の一歩をお寺へ向けて頂けたら」と住職は話されます。「葬儀費用が抑えられた」「家族、親戚でお寺に来る機会になった。お寺を身近に感じることができた」などの声が、寺院葬を行ったご門徒さんから寄せられています。

「葬儀の時はお寺様の話を聞きたい。お話がないとお参りした甲斐がない気がする」と千原さん。葬儀の場で一つの法座をという住職の願いがしっかりと伝わっているのだなと感じると同時に、日ごろからご門徒さんとのコミュニケーションを大切にされているからこそ、田舎ならではの風習も少しずつでも変えてこられたのだろうと思いました。


(新潟教区通信員 岩見美希)