香川県高松市の南、高松駅から車で約30分の自然豊かな郊外に、立善寺は建っています。立善寺では毎年、報恩講の前日にご門徒さんがお寺に集まって、手作りのお華束、串積み(クスヅミ)作りが行われています。
《串積み作り再開》
室町時代の将軍、足利義満の執事を務めていた細川頼之公の菩提寺であり、頼之が領国である香川県香南町に建てた、岡城の鬼門の鎮守として重んじられたという歴史を持つ、由緒あるお寺です。
その立善寺で、毎年11月30日の報恩講の前日にご門徒さんがお寺に集まって、手作りの串積み(お華束)作りが行われています。
串積み作りは、前住職の細川教春さんが子どもの頃にはあったそうですが、いつの頃からか中断していたといいます。そのような中、他派の串積み作りのお手伝いに参加したご門徒から、「うちのお寺でもやりませんか」という話が出たことをきっかけに、1976(昭和51)年に再開されました。
《道具の工夫を重ねて》
前住職のかすかな記憶を頼りに、串積み作りは40年ほど前、一からの再スタートとなりましたが、たくさんの問題が出てくる中で、試行錯誤を繰り返しながら、前住職自ら道具の改良を進めていかれました。
例えば、大きな餅から串積み用の小さな餅を型抜きする道具は、元々、竹でできていましたが、餅がくっついて離れなくなったり、力を入れて押し抜く抜く際に、手のひらに跡が付くほど痛かったり、作業性に問題がありました。その問題を解決するために、ステンレスパイプをカットし、先端を研磨して傾斜を付けることによって抜けを良くしたり、持ち手側には、椅子の脚に着いているゴムキャップを被せることによって、手が痛くないようにするなどの改良をほどこしました。(写真参照)
長年の工夫によって、今では昔と違って、皆で手際よく作業を進められるようになりました。
毎年の報恩講時の恒例行事として、立善寺ご門徒さんや前住職、住職、坊守さん、皆の想いがたくさん詰まった串積み作り。次にその手順をご紹介したいと思います。↓
《串積み作りの手順》
①蒸し器でもち米を蒸します。
②蒸しあがったもち米を餅つき機に移して、餅にします。
③つきあがった餅を台の上に移し、木製の鍋蓋で薄く押し広げていきます。
④前住職によって改良された特製の道具で、餅を型抜きします。
⑤型抜きした小餅をザルに移し、左右に揺することによって丸く形を整えます。
⑥小餅を台の上に広げて天日干しして、作業しやすい硬さに整えます。
⑦室内の作業場に移し、串に小餅を5つ刺します。
⑧回転する作業台に置いた芯の周りに小餅を刺した串を立てて、紐で縛ります。
⑨一つ飛ばしで小餅が交互に積みあがるように、小餅を刺していきます。徐々に串が広がってくるので、5~6段積みあがったら、改めて紐で縛り、串が広がっていくのを防ぎます。最後の5段は下の5段同様、まっすぐに刺します。
⑩積みあがった串積みに刷毛を使って食紅で着色します。
⑪出来あがった串積みを慎重に本堂に運んで並べます。皆で作った串積みで荘厳して、翌日の報恩講を迎えます。
《取材を終えて》
ご門徒さんとの関係が少しずつ希薄になり、お寺に来る人が少なくなってきている中、ご門徒さんがお寺に集まり、自分たちで串積みを作ることにより、真宗門徒にとって最も大切な報恩講を「皆でつくっていこう」という思いが感じられました。取材をとおして、ご門徒さんとのこうしたつながりの大切さを学ばせていただきました。
(四国教区通信員・脇屋次男)