福岡県行橋市の中心部にほど近い場所にある舊縁寺。報恩講やお彼岸の年中行事の他、坊守さんの発案で、「お寺deヨガ」や、他のお寺の住職を招いての「お経から学ぼう」、子どもたちが参加する「テラコヤ」など、お寺で様々な活動を行っておられる。このたび、住職の栁澤明さんと坊守のさとりさんにお話を伺った。
これらの活動のきっかけには、さとりさんの父である前住職が亡くなり、お二人が中心となってお寺を守っていかなければならない状況となって必然的にご自身もお寺にいる時間が増えたこと、以前より総代さんたちから「若い人たちがお寺に来なくなったね」という心配の声があがっていたことなどがあった。「初めてご門徒以外も来られるような催しをお寺で開催した時に「こんなところにお寺があったんやね」という声が聞こえてハッと気づかされたものがありました。人と会うのが好きですし、せっかくなら私と同じ世代の人たちにもお寺に来てほしい」との思いから活動を始められた。それぞれの情報は寺報の他、お寺のホームページやインスタグラムでも発信されている。舊縁寺のご門徒以外にもひろく呼びかけられており、ご門徒である・なしに関わらず、幅広い世代の方が参加している。
「仏教基礎講座」は毎回明さんが講師となり、取材に伺った日は「歎異抄」をテーマに開かれていた。親鸞聖人の言葉を紹介しながら「歎異抄」がどのような書物で、いかに現代まで私たちに届いているのかを丁寧にお話しされる明さん。参加者のお一人は「お話を聞いて何か喋らなければいけない、という空気ではないので参加しやすいんです」と話された。 取材前は勉強会のような雰囲気を想像していたが、ご門徒以外の方も気軽に参加されており、雑談しながらのあたたかな雰囲気が非常に印象的だった。
お話を伺うとSNSの情報だけではなく、「お寺deヨガ」や「テラコヤ」がご縁で他の会の存在を知り、参加する方もいるとのこと。
これだけたくさんの活動をされていると、「人が来てくれるだろうか」と集まる人数のことが心配になりがちだが、さとりさんにそのことを尋ねると「たくさんの人に来てほしいという気持ちは全くないんです。こういう場をコンスタントに続けることで、今は来られなくてもタイミングが合った時に「行ってみようかな」と思ってもらえたらいいですよね。悩んでいるときにもここにお寺があったな、と思い出してほしい」と語られた。
高齢化や過疎化、仏事以外でお寺に来る方が少なくなるなど、お寺によって抱えている課題は様々である。年中行事だけではない、それ以外の活動をすることで「お寺」という場所を知ってもらう、新たなご縁にも繋がっていくのだとあらためて感じた。
(九州教区通信員・相馬朋子)
『真宗』2024年11月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:九州教区京都組舊縁寺(住職 栁澤 明)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。