2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの学校が休校となっていた期間、「お寺は部屋数が多い」という強みを利用して、能登教区の淨願寺では「寺子屋自習室」を開催しました。今回は淨願寺住職の竹原了珠氏による、自習室開催に至るまでの過程と実際に開催してみてのレポートをお届けします。

 

 


 

-はじめは、学校へのイライラから-

 

 

 

「ひさしぶりに失礼します、浄願寺のジューショクです。長いこと、子ども会をお休みして、すみません。

 

学校の休みの期間がまた延期になりましたが、みんなはどうしてますか?夜遅くまで起きていたり、お昼近くまでゆっくり寝てたり、おかしな生活があたりまえになってませんか?

 

こんな時期ですが、「寺子屋自習室」というのを始めます。」

 

 

 

この書き出しで、子どもたちに案内を送ったのが、5月初め。

 

当時、石川県の小学校はコロナウィルス感染症予防のため3月から休校が続いていました。休校の期間、数回だけ登校して宿題を受け取りに行きます。でも、玄関の下駄箱に置いてある宿題を取ってくるだけで、友だちにも会えません。

 

 

ほとんどの家庭では両親は共働き。日中は子どものそばにいることができません。子どもは山のような宿題を前にして、先生の励ましや、友だちと協力することなく、長い期間を耐えなければなりません。子どもたちにコロナ対策のしわ寄せがいっていると、住職は感じていました。住職にも小学校6年生の子どもがいますが、学校からの連絡はほとんどなく、宿題をやらせるだけ。学習のフォローは、「インターネットのおすすめサイトをお知らせします」があったきり。生徒のことを何か考えてくれているのだろうかと、どんどん疑い深くなり、イライラするようになっていきました。

 

 

-「何ができるか」を考えて-

 

じゃあ、お寺だったら、私だったらどんなことができるかを、ずっと考えていました。

 

お寺には、普段使っていない部屋がいくつもあるので、子どもの個室がけっこう作れます。ということは、感染対策がしやすいし、この敷地の中で他の友だちが同じように勉強しているのを感じて、それを励みにすることができるかな。

 

そして、お寺にはWi-Fi(インターネットをだれでも使える通信網)も整備してますし、使える端末(PCやスマホなど)は新旧あわせて5、6台あります。ZOOM(ズーム)というインターネットの中継ができるソフトを使えば、各部屋の子どもたちと住職をインターネットでつないで、顔を見ながら見えるし会話もできる。

 

そして、最も大切なこと。親御さんは子どもの感染に一番気を使います。その点で安心して預けられる信頼関係が最も大切。だから、お寺の感染対策はきちんと伝え理解していただいて、意見交換をできるようにする。お寺に来る前日には、何を自習するかを親子で決めて、当日の朝、検温して熱があれば欠席してもらう。

このようなことをして、学校が再開したらスムーズに学校中心の生活に戻ることができるよう、お寺で学校のような生活をしよう。事業名は「じょうがんじ子ども会スポット(短期)事業『寺子屋自習室』」。

 

 

 

 

 

 

-自習室の流れ-

 

初日、集まった子どもたちは3名(計7名の参加)。小学校と同じように、朝8時15分までに登校。本堂正面の「職員室」で検温の熱を報告、空白の「時間割表」を受け取って、自分のルーム(座敷)に入ります(感染の不安が収まってきた5月中旬以降は、本堂で距離をとって机を配置します)。「時間割表」には、保護者と決めた自習の内容を書き入れます。

 

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張り紙には淨願寺自習室職員室と記載

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時間割表

 

 

全員がルームに入ったら、ZOOMでホームルームを始めます。「みんな、聞こえてる?始めるよ!おはようございます!じゃあ、今日の1限から4限までの自習の予定を、〇〇ちゃんから、どうぞ!」とみんなでお互いの自習の内容を共有します。

 

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このあと、時間割の始まり、そして休憩の時間になればZOOMで伝えます。休憩時間には、おやつ選びをしたり、浄願寺流(つまり自己流)の黙想などをして、メリハリをつけて集中できるようにします。

 

 

子どもたちが自習している間は、住職は「職員室」で本を読んだり、事務仕事をしずかにしていますが、3限目あたりからは厨房で「給食」づくりをします。おにぎりにお味噌汁、そして一皿がつきます(焼肉やコロッケ、卵焼きなど)。

 

4限が終わると、それぞれのルームに住職が給食を運んで、ZOOMで「今日の献立は、〇〇〇〇です。手を合わせて・・・『みひかりのもと(~食前の言葉)、いただきます!』」と食べ始め、おしゃべりしながらの給食時間です。

 

基本は給食が終われば終了ですが、感染の不安が落ち着いてきた時期には、午後、体育(公園で運動会)や体験学習(ドーナツづくり)をしました。

 

 

以上が大まかな流れです。最初は、週3日という設定でしたが、「宿題の量が多いから明日も自習室を開いて!」と子どもたちからリクエストも。どうやら毎日友だちと会いたい子どもたちの作戦だったようで、「もし宿題が学校から追加されなかったら自分たちで宿題を作ろう!」と秘密の相談をしていたようです。

 

 

学校が再開した6月には「自習室」は一旦閉校としました。

 

住職から子どもたちに最後に「とても楽しかった!しらがさん(住職のニックネーム)は、ずっと考えに考えて、『コロナのこんな時に!って酷いこと言われるかな』とか思ったら怖かったけど、でも自習室をはじめたの。今日、自習室は終わるけど、でも、たぶんコロナは続く。みんなもあきらめずに考え続けて。俺も考え続けるから」と伝えました。

 

 

-保護者からの声-

 

「今日もありがとうございました!帰ってきてから話を聞きました!!楽しかった~って言ってました。このような会はなかなかできることではないと思います。本当に感謝しています」

 

「家での勉強より、嫌にならずにできたとか、卵焼き、超美味しくてとか、いいのにしてくれたとか、満足で、よかった話ばかりで、久々に気持ちのリラックスできたような、そんな感じでした。本当にありがとうございました。(中略)この、大変な時期に、親と子どもたちのことを考えて、しかも徹底した取り組み内容を考えて実行してくださり、ありがとうございました。学校よりすばらしい!」

 

(自習室閉校の日)「大変なご時世の中、自習室ありがとうございました。帰り道、子どもたちは少しでも長く自習室の余韻?を楽しみたかったようで、信号が赤になるよう祈りつつ帰っていきました。きっと大人になっても覚えている思い出の一つになると思います。ありがとうございました」

 

 

(淨願寺住職/企画調整局参事 竹原了珠)